2009年12月16日
雪の序章(12月16日)

これ、今日午後3時の衛星画像。
日本海には大陸を吹き出し口にしたような扇形の雲の帯がありますよね。
これ、収束線とかシアーラインといって、北西の季節風が集まるところ。
雪雲だらけの日本海の中でも、一番雪雲が発生しやすい場所です。

計算値でもそうなっていますよね。
この雲の帯の行く先がちょうど北陸。
その延長上にある長野の雪はこの雲の帯がどれだけ県内に入り込むか?にかかっています。
気になる今夜の雪と明日の雪・・・
長野地方気象台発表の今夜と明日の予報から・・・・
長野県 16日17時
北部
今夜 北の風 くもり 夜 雪
明日 北の風 後 南の風 くもり 時々 雪
中部
今夜 南の風 晴れ 夜 くもり 所により 雪
明日 南の風 くもり 夕方 から 夜のはじめ頃 雪
南部
今夜 南の風 晴れ 夜 くもり
明日 南の風 くもり 夕方 から 夜のはじめ頃 雪
今夜は、中部に「所により」がついた雪、北部にはストレートに雪が予想されています。
北部中心に雪だってわかります。
一方、明日の予報は・・・
北部は一日を通して「時々 雪」、中部と南部は「夕方 から 夜のはじめ頃」・・・つまり午後3時から午後9時までの間で広い範囲で雪が予想されています。
そして、長野地方気象台、夕方5時発表の天気概況には・・・
今夜は、低気圧がに日本の東海上に抜け、日本付近は次第に冬型の気圧配置になる見込みです。
このため、晴れている所も次第に曇りとなり、夜には北部や県の西側の地域を中心に雪となるでしょう。
明日は冬型の気圧配置となり上空に強い寒気が流れ込む見込みです。
このため、北部では曇りで断続的に雪となるでしょう。中部や南部では曇りで、夕方から夜のはじめ頃にかけて、雪となるでしょう。
と、書いてありました。
今夜は、なんで西側の地域中心なの?具体的にはどのエリア?
上で見た雲の帯は、県内にどこまで入り込むんでしょうか?
そこで、今夜24時の降水量(雪)のエリアの計算値を見てみます。

オレンジの矢ばねが風向。
北陸で雪が多くなるのは当然ですが、雲の帯を運んでくる北西の風がぶち当たる北アルプス付近が雪の中心になっていることがわかります。
この時間が今夜の雪のピークと思われますから、県内のほとんどのエリアは豪雪というほどではないと思われます。
ですから、気象台発表の概況では「北部や県の西側の地域を中心に」と書かれているんでしょう。
一方、明日午後6時の同じ計算値を見てみると・・・・

雪雲を運ぶ風は北西から西風に変わっています。
そして、雲の帯は遠く若狭湾方面を経由して県南部にまで吹き込んでいることがわかります。
北アルプス周辺はもちろん、ぶち当たる高い山がない木曽南部では、雪雲が県内に一気に流れ込み、ぶち当たった中央アルプスや南アルプス方面に雪を降らせることになるようです。
今夜は雪の序章・・・明日以降・・・クライマックス?に近づいていくわけですね。
ところで、今日、雪の前兆・・・・観天望気に使えるかもしれない雲を発見したので、ちょっとまとめてみました。
今日午後2時過ぎの長野市内の空。

白馬方面と戸隠方面から延びた二筋の雲の帯。
白馬方面から延びた雲は須坂付近の千曲川上で消滅。
戸隠方面からの雲は善光寺の裏山・・・地附山付近で消滅していました。
あまりにハッキリと帯状になっていたので、理由を考えてみたのですが・・・・どうやら冬型が強まって雪になる前兆の雲・・・・かもしれません。
そうだとすれば、長野盆地で雪が降るときの目安にすることができるかも?
さっそく地図上に、上空1500m付近の風の様子の計算値を重ねてみました。

まず、白馬方面の雲から・・・
この時間、富山県側は全般に北西の風でしたが、富山県側の地形の影響で、白馬岳に向かって風が集まっていました(水色の矢ばね)。
また、同時刻、長野県の上空には、今夜からの雪をひかえて、この冬一番の寒気が入りつつありました。
富山県側で集まった風が白馬岳を乗り越えるときに山岳波という上下に波打つ空気の波が発生し、上昇した空気が寒気に触れて帯状の雲を発生させた・・・のかもしれません。
ちょうどスキー場のスノーマシンから人工の雪が吹きだしている様子に似ています。
ただ、長野盆地では、飯綱・黒姫などを東側に迂回した北風が吹いていたので(オレンジの矢ばね)、長野盆地東側で山岳波が消滅し、帯状の雲も途切れた・・・と考えるとますますつじつまが合います。
一方、戸隠方面の雲・・・
こちらも、北アルプスの北側の比較的標高が低いところをすり抜けてきた北西が戸隠連峰にぶつかり、やはり山岳波が発生したものと思われます。
ただ、戸隠連峰となりの飯綱山の東側には強い北風が吹いていた(オレンジの矢ばね)ので、比較的短い帯状の雲になった・・のではないでしょうか。
今回の寒波は、里雪型といって、西風が強まって大雪になるパターンです(詳しくは今朝の記事)。
その前兆の北西の風によって、このような雲が発生したのであれば・・・長野盆地で雪になる目安になりますから、この冬、もっと観察してみたいと思ってます。
2009年12月16日
天気予報は当たるのか?(12月16日)
故郷長野の帰ってきた気象予報士Kasayan。おきまりのテレビの天気予報とはちょっと異なる視聴者の視点から、今日の天気予報をチェックしています。今日の天気予報は当たるんでしょうか?
1、今日の一言
テレビの天気予報では、衛星画像を示しながら「日本海に寒気の吹き出しに伴う筋状の雲が発達しています」って言っています。
毎日原稿を書いていたころは、マンネリ化して、違う言い方はないのか?と考えていました。

「大陸の冷蔵庫のドアが開いたので、白い湯気が出来ました」じゃ・・・・だめ?
2、全国の予報
テレビやネットでご存じの天気マークの天気予報。使い方次第で何倍にも役立てることができますよ。まずは全国の予報から。「木を見て森を見ない」などと言いますが、天気予報も頭上の天気だけを気にしていてもダメ。
天気の変化は他県からやってきます。

長野の民放の天気予報では、全国の予報は県内の予報の後にやるんですよね。
全国的にも「地元が大切!」という放送局の意向で、こうなっちゃうんんですけど、予報をキチンと理解してもらうためには先に全国の予報から放送したほうが良いと思うんですけど・・・。
・・・という余談はやめて、相変わらず二つのエリア分け。
ただ太平洋側、太陽マークじゃなくて「のち くもり」「のち 晴れ」の回復エリアがある・・・ここが典型的な冬型とは異なるところ。
低気圧や前線が抜けるんじゃないか?と想像できますよね。
3、長野県の予報
長野にズーム。天気マークしか見ていないんじゃ?
「・・のち・・」って何時でしょう? 「所により・・」があるかもしれませんよ。

北部だけ「のち 雪」マーク。
中南部は雪マークはないけど、予報文には「所により 夜 雪」。
ここ数日のパターンですけど、今日はちょっと雰囲気が違うんです!
気象庁は予報の発表と同時に、短文の天気概況も発表しているのですが、そこには・・・
・・・と書かれています。
具体的に天気の流れをイメージできるような、短文でも”力の入った自信のある”概況だと思うんですがいかがですか?
ここまで具体的だと、当たったの?という結果の検討に役立つ・・・意地悪くいえば、判断の誤りがはっきりすることになります。人口の多い「平地でも」が一番気になりますよね?
今日は、この概況を発表するに至った根拠を見ながら、予報のストライクゾーンを考えてみたいと思います。
4、一般的な天気図の評
どんな理由でその予報は作られたんでしょうか?理由がわからなければ占いと同じ?
テレビの解説は「天気予報の確からしさ」を知るための道具です。

天気概況に書いてあった、「今日は、日本の南を低気圧が通過する見込みです。夕方からは、冬型の気圧配置が強まるでしょう。」・・・そのとおりになってますよね。
今日のポイントは、昨日の記事にも書いたように、日本海上の弱い気圧の谷。
冷たーい空気が線状にぶつかりあって、雪雲をたっぷりと発生させます。
(昨日の記事で詳しく説明しておきました)
これ、「里雪パターン」と呼ばれていて、山だけじゃなくて平野部にも雪を沢山降らせる気圧配置のです。
ただ・・・北陸や新潟はそうだとしても、長野県の場合はパターンに当てはまるのか?このあたりがイマイチ不明なところ。
概況にあった「夕方からは平地でも雪となるでしょう」は、このあたりを考慮したのかもしれません・・・また中南部の「西側を中心に」もそうですが・・・今日の注目点です。
では、予報官が見たであろう専門天気図で、もうちょっと掘り下げてみます。
なぜ冬型の気圧配置が強まるのか?

これ、地上の天気変化にパワーを与える上空の低気圧や気圧の谷の様子。
このところ続く冬型の気圧配置の原因は、北海道の北に居座る上空の低気圧でした。
そして、上空の低気圧の周辺では、周期的に上空の気圧の谷が発生し、反時計回りに進んでいます。
この気圧の谷が通過するタイミングで、冬型が強まったり弱くなったりするので、「夜から雪」でも昼間には晴れるなど、周期的に雪が降るわけです。
そして、今夜、上空の気圧の谷がやってくるので・・・「夜 雪」になります。
次に、なぜ雪が強まるのか?

理由は天気図のアニメで説明しときましたけど、専門天気図ではもっと具体的に描かれています。
風が集まる場所に+14とか、+19と書かれていますが、降水(雪)量が極大になる場所の計算値ですから、雪雲が発達する場所ということになります。
この場所の延長上に長野があるので、雪が強まると考えられます・・・が・・・どれだけ雪雲が流れ込むのか?はこれだけではイマイチわからないので、後で別の計算値を見てみましょう。
そして、一応、降るものが雪になるのか?をチェックしておきます。

降るものは、まず間違いなく雪になるであろうという目安・・・上空5400m付近の寒気は長野県の北半分を覆っていますから、雪雲の受け入れ態勢は十分といったところでしょう。
で・・・最後に具体的な県内の雪のエリアは?

今夜、各時間帯の降水(雪)のエリアをチェックしましたが、降水(雪)エリアのピークと思われる午後9時の予想図を添付しておきました。
上で見た上空の気圧の谷が通過する時間帯です。
ザクッと見たエリアを書き込んでおきましたけど・・・なんだかイマイチな感じです。
計算の誤差を考えてGSMという別の計算値もチェックしましたが・・・やっぱりイマイチ。
計算されているエリア・・・ちょっと降水量が少ないんですよね・・・・・
平野部・・・せいぜいちらつく程度かなぁ・・・積もっても長野盆地の北側の一部で、うっすら程度かなぁ・・・・なんて気がするんですが・・・・正直確信が持てません。
長野地方気象台の予報官は、きっと過去のデータにもとづいて計算に修正を加えているんでしょうから、今日の実況をチェックすれば、かなり長野の天気の勉強が進みそう。
予報官の修正方向を見ること・・・これを今日の宿題にしておきます。
ということで・・・・天気予報は当たるのか?のお題に反して、今日も「天気予報はどうなってるの?」にしておきます。
余談:昨日の朝、北部の予報は「所により」がついていない「夕方 から 雪」。
夕方5時発表の予報では・・・「所により 雪」に変更。
気象庁の予報官もサジ加減に悩んでいるようです。
傾向として、ちょっと悪目の予報出すような気がするんですが・・・見逃しよりも空振りのほうがイイという考え方があるんでしょうか?
1、今日の一言
テレビの天気予報では、衛星画像を示しながら「日本海に寒気の吹き出しに伴う筋状の雲が発達しています」って言っています。
毎日原稿を書いていたころは、マンネリ化して、違う言い方はないのか?と考えていました。

「大陸の冷蔵庫のドアが開いたので、白い湯気が出来ました」じゃ・・・・だめ?
2、全国の予報
テレビやネットでご存じの天気マークの天気予報。使い方次第で何倍にも役立てることができますよ。まずは全国の予報から。「木を見て森を見ない」などと言いますが、天気予報も頭上の天気だけを気にしていてもダメ。
天気の変化は他県からやってきます。

長野の民放の天気予報では、全国の予報は県内の予報の後にやるんですよね。
全国的にも「地元が大切!」という放送局の意向で、こうなっちゃうんんですけど、予報をキチンと理解してもらうためには先に全国の予報から放送したほうが良いと思うんですけど・・・。
・・・という余談はやめて、相変わらず二つのエリア分け。
ただ太平洋側、太陽マークじゃなくて「のち くもり」「のち 晴れ」の回復エリアがある・・・ここが典型的な冬型とは異なるところ。
低気圧や前線が抜けるんじゃないか?と想像できますよね。
3、長野県の予報
長野にズーム。天気マークしか見ていないんじゃ?
「・・のち・・」って何時でしょう? 「所により・・」があるかもしれませんよ。

北部だけ「のち 雪」マーク。
中南部は雪マークはないけど、予報文には「所により 夜 雪」。
ここ数日のパターンですけど、今日はちょっと雰囲気が違うんです!
気象庁は予報の発表と同時に、短文の天気概況も発表しているのですが、そこには・・・
今日は、日本の南を低気圧が通過する見込みです。
夕方からは、冬型の気圧配置が強まるでしょう。
このため、北部では初め晴れますが、次第に曇りとなり、昼過ぎから山間部を中心に雪の降る所があるでしょう。また、夕方からは平地でも雪となるでしょう。
中部と南部では曇りで時々晴れますが、夜には西側を中心に雪の降る所があるでしょう。
・・・と書かれています。
具体的に天気の流れをイメージできるような、短文でも”力の入った自信のある”概況だと思うんですがいかがですか?
ここまで具体的だと、当たったの?という結果の検討に役立つ・・・意地悪くいえば、判断の誤りがはっきりすることになります。人口の多い「平地でも」が一番気になりますよね?
今日は、この概況を発表するに至った根拠を見ながら、予報のストライクゾーンを考えてみたいと思います。
4、一般的な天気図の評
どんな理由でその予報は作られたんでしょうか?理由がわからなければ占いと同じ?
テレビの解説は「天気予報の確からしさ」を知るための道具です。

天気概況に書いてあった、「今日は、日本の南を低気圧が通過する見込みです。夕方からは、冬型の気圧配置が強まるでしょう。」・・・そのとおりになってますよね。
今日のポイントは、昨日の記事にも書いたように、日本海上の弱い気圧の谷。
冷たーい空気が線状にぶつかりあって、雪雲をたっぷりと発生させます。
(昨日の記事で詳しく説明しておきました)
これ、「里雪パターン」と呼ばれていて、山だけじゃなくて平野部にも雪を沢山降らせる気圧配置のです。
ただ・・・北陸や新潟はそうだとしても、長野県の場合はパターンに当てはまるのか?このあたりがイマイチ不明なところ。
概況にあった「夕方からは平地でも雪となるでしょう」は、このあたりを考慮したのかもしれません・・・また中南部の「西側を中心に」もそうですが・・・今日の注目点です。
では、予報官が見たであろう専門天気図で、もうちょっと掘り下げてみます。
なぜ冬型の気圧配置が強まるのか?

これ、地上の天気変化にパワーを与える上空の低気圧や気圧の谷の様子。
このところ続く冬型の気圧配置の原因は、北海道の北に居座る上空の低気圧でした。
そして、上空の低気圧の周辺では、周期的に上空の気圧の谷が発生し、反時計回りに進んでいます。
この気圧の谷が通過するタイミングで、冬型が強まったり弱くなったりするので、「夜から雪」でも昼間には晴れるなど、周期的に雪が降るわけです。
そして、今夜、上空の気圧の谷がやってくるので・・・「夜 雪」になります。
次に、なぜ雪が強まるのか?

理由は天気図のアニメで説明しときましたけど、専門天気図ではもっと具体的に描かれています。
風が集まる場所に+14とか、+19と書かれていますが、降水(雪)量が極大になる場所の計算値ですから、雪雲が発達する場所ということになります。
この場所の延長上に長野があるので、雪が強まると考えられます・・・が・・・どれだけ雪雲が流れ込むのか?はこれだけではイマイチわからないので、後で別の計算値を見てみましょう。
そして、一応、降るものが雪になるのか?をチェックしておきます。

降るものは、まず間違いなく雪になるであろうという目安・・・上空5400m付近の寒気は長野県の北半分を覆っていますから、雪雲の受け入れ態勢は十分といったところでしょう。
で・・・最後に具体的な県内の雪のエリアは?

今夜、各時間帯の降水(雪)のエリアをチェックしましたが、降水(雪)エリアのピークと思われる午後9時の予想図を添付しておきました。
上で見た上空の気圧の谷が通過する時間帯です。
ザクッと見たエリアを書き込んでおきましたけど・・・なんだかイマイチな感じです。
計算の誤差を考えてGSMという別の計算値もチェックしましたが・・・やっぱりイマイチ。
計算されているエリア・・・ちょっと降水量が少ないんですよね・・・・・
平野部・・・せいぜいちらつく程度かなぁ・・・積もっても長野盆地の北側の一部で、うっすら程度かなぁ・・・・なんて気がするんですが・・・・正直確信が持てません。
長野地方気象台の予報官は、きっと過去のデータにもとづいて計算に修正を加えているんでしょうから、今日の実況をチェックすれば、かなり長野の天気の勉強が進みそう。
予報官の修正方向を見ること・・・これを今日の宿題にしておきます。
ということで・・・・天気予報は当たるのか?のお題に反して、今日も「天気予報はどうなってるの?」にしておきます。
余談:昨日の朝、北部の予報は「所により」がついていない「夕方 から 雪」。
夕方5時発表の予報では・・・「所により 雪」に変更。
気象庁の予報官もサジ加減に悩んでいるようです。
傾向として、ちょっと悪目の予報出すような気がするんですが・・・見逃しよりも空振りのほうがイイという考え方があるんでしょうか?