2009年12月20日
長野の雪を肴に千曲錦
昨日の大雪はKasayanの住んでいる長野市内でも20センチ以上になりました。
一転して今日、長野市内は青空も広がって、穏やかな冬晴れ。

(今日飯綱高原にて)
そこで・・・・今夜は久しぶりの雪見酒とばかり、千曲錦の熱燗を・・・・・
ところで、北アルプス方面では引き続き雪が降り続いていて、今夜、東北の日本海沖にある低気圧が東北上空を通過するタイミングで冬型の気圧配置が強まり、大北地方ではまとまった雪が予想されています。

19時48分発表の注意報によれば、大北地域で明日朝までに山沿いを中心に50センチの降雪の可能性あり。
また、昨日の大雪の時ほどではないにしろ、県内上空には並雪があってもおかしくないだけの寒気が入っています。

そうなると、長野市内をはじめ、中部では松本や諏訪地方、南部では飯田・伊那地方への雪の拡大が心配になってきます。
そこで、雪のエリアをイメージするために、今朝の記事と同じプログラムの最新の計算値を確認。

最も降水(雪)のエリアが拡大すると思われる今夜24時の降水(雪)のエリアがこれ。
北アルプス方面や新潟県境付近でまとまった雪が予想され、木曽地方や南アルプス方面でもそこそこの雪が予想されています。
もっとも、北アルプスの東側・・・松本や諏訪方面、そして長野市付近の降水(雪)は少ない・・・・。
このところずっとその理由を考えていました。
まず誰でも思いつくのが、「3000m級の山が雪雲をブロックするから」ということ。
でも、昨日の大雪の際も北西の風が吹いていましたから、それだけで降雪が少ない理由とするわけにはいきませんよね。
「なぜ、似た気圧配置や寒気で、県内部まで雪雲が流れ込む場合と、そうでない場合があるんだろう?」
今日、ひとつのストーリーをイメージできたので、備忘録がわりにここにまとめておきます。
ここからはちょっとアルコールの入ったオジサンの理科の自由研究の発表ですので、、興味のある方だけ読んでいただければかまいません
(長野県民は議論好きだから・・・)
この図は、昨日の大雪のフィナーレにあたる朝9時の上空の風向・風速。
下層1500mから上層5200m付近までを並べています。

長野県に吹きつける季節風の目安になる輪島の風は、上層から下層まで、強い西~北西の風が吹いていました。
次、この図は今夜24時の同じ高さの風の様子。

上空1500m付近の下層では、北西の風が予想されていますが、上空3000m付近では南西の風、さらに上ではやや南よりの西風が予想されています。
下層と上層で、風向が異なっているわけです。
二つの図の比較から、こんな仮説を考えてみました。
19日の大雪のとき、日本海で発生した雪雲と、日本海の水蒸気を含んだ空気は西~北西の方向で、富山県・岐阜県側から北アルプスに吹き寄せられていました。
吹き寄せられた雪雲は、北アルプスにぶつかって強制的に上昇、発達し、長野側へ。
このとき、上空の風も下層と同方向、それも上層ほど風速が速い風が吹いていたので、綺麗な山岳波(十数キロ周期で発生する空気が上下する波)が発生し、雪雲は波動に乗って東へ進み、湿った空気は山岳波によって連続的に上層の寒気中を上下して雲の帯を作り、長野県東部まで雪雲に覆われる状態に。
一方、上空の風が下層と異なる風向である場合には、標高3000mの北アルプスの稜線まで吹きあげられた雪雲は、同高度の異なる風向で四散。
また、稜線を乗り越える風と上空の風の方向が異なるため、綺麗な山岳波が発生せず、湿った空気は下降流となってせいぜい大北地域のみに雪を降らせる。
ところで、長野地方気象台のHPに掲載されている、長野県北部の大雪パターンの中に、「下層から上層まで北西の風」であること、という一節がありました。
どのような根拠で書かれているのかは、いずれ気象台を訪ねてうかがってみたいと思いますが、その理由はこんなところにあるんじゃないでしょうか?
(いまさらこんなこと気付いたのかよ!といわれるかもしれませんけど)
2009年12月20日
天気予報は当たるのか?(12月20日)
故郷長野の帰ってきた気象予報士Kasayan。おきまりのテレビの天気予報とはちょっと異なる視聴者の視点から、今日の天気予報をチェックしています。今日の天気予報は当たるんでしょうか?
1、今日の一言
今朝の出張雪かきは、軽く雪をなぜる程度・・・楽勝でした。
このところ、日の出が遅いですから、午前7時前後が一番寒いですね。
今朝の長野市内は-3.4℃。
松代方面の千曲川を見ると、川霧が一段と濃く見えました。

昨日、北信各地は一日を通して氷点下の所ばかりでしたが、気象庁発表の今日の予想最高気温は4~5℃。
昨日の予想より、寒波は足早に遠ざかって行ったという感じですけど・・・・
昨夜、北アルプス方面だけ雪雲が残ったようですが、これは寒気が逃げる際に屁をこいた?みたいなもの(午前9時現在、大北地域には大雪注意報は出てます)。
今夜は、ちょっとだけ寒波の仕返しがあるかもしれません。
どれだけ長野県内に雪雲が流れ込むのか?月曜の朝が気になりますよね。
2、全国の予報
テレビやネットでご存じの天気マークの天気予報。使い方次第で何倍にも役立てることができますよ。まずは全国の予報から。「木を見て森を見ない」などと言いますが、天気予報も頭上の天気だけを気にしていてもダメ。
天気の変化は他県からやってきます。

日本海側雪パターンはあいかわらず変わりませんけど、東北では太平洋側でも雪マークがついています。
太平洋側に太陽マークがつく典型的な冬型にちょっと変化があることを疑わせます。
また、鹿児島の雨マークは、寒気が北上していることを想像させてくれます。
3、長野県の予報
長野にズーム。天気マークしか見ていないんじゃ?
「・・のち・・」って何時でしょう? 「所により・・」があるかもしれませんよ。

マークじゃわからない風の様子も書き込んでおきました。
県内ローカルのどの天気予報番組を見ても、風の予報は全くやっていません。
これ、全般に風の弱い長野県ならではの特別な番組構成なんです。
海に面している県や関東・近畿近県の天気予報では、どんなに穏やかな日でも地図上に矢印を表示して、風向や風速を伝えています・・・・知ってました?
本題にもどって・・・・日中の県内は全般に南風。
ただ、北部はやがて北に変わり、中部は南風が次第に強くなる傾向。
これ、前線が通過するときのパターン。
日中、気温が上がるのもこの南風のためです。
そして、北風に変わる北部では急激に気温低下。
前線通過に伴って天気が急に変化する可能性があるわけですが・・・北部の予報・・・「夜 雪」がついています。
どの程度急な変化なのか?・・・月曜日の朝、雪雲はどれだけ県内に入るのか?が一番気になるところです。
4、一般的な天気図の評
どんな理由でその予報は作られたんでしょうか?理由がわからなければ占いと同じ?
テレビの解説は「天気予報の確からしさ」を知るための道具です。
天気が急激に変化する場合には、今がどうなっているのか?、これからどうなるのか?という流れで天気チェックをします。
そうしないと、何が起こるのか?が、良く見えてこないんです(予報を出す人はどんな時でもこの流れでチェックしていますが)。
ということで、今朝のひまわりの映像と、同じ時間の実況天気図から見ておきましょう。

テレビの天気予報で、最初にひまわりの画像を見せるのは、一目で雪(雨)雲の様子がイメージできるから。「筋状の雪雲が・・」っていうコメントは、「雪雲が日本海でバンバンわいていますよ!」と言いたいわけですが、「筋状の雲が見えます」とコメントしただけじゃ、「だからどうなの?」と思っちゃう人がいるんじゃないかといつも気になっています。

次に実況天気図を見せる場合があります。
ひまわりの画像で見た雲が、どういう理由で発生しているのか?を伝えるためなんですけど、「実況」天気図を見せる天気予報番組は、長野の場合NHKの正午前と午後6時50分の天気予報だけ。
いきなり「予想」天気図を見せてしまうのは番組時間がないからですけど、今日の場合は、いきなり何だ?という感じになっちゃうかと思います。
今朝の実況天気図・・・相変わらず西高東低の冬型の気圧配置。
ただ、良く見ると、日本海の等圧性は縦に並んでいても、東西にウネウネと波打っています。
弱い気圧の谷と、弱い気圧の尾根が並んでいるわけですが、日本海の雲もこのウネウネに対応して「筋状」になっていますが、このウネウネが天気にイタズラをします。
もうひとつ・・・冬型の気圧配置の場合、「等圧線の間隔が混んでいて・・」という解説を良く耳にしますが、北日本の等圧線の間隔が開いているのに対して、西日本の等圧線の間隔が混んでいるのが特徴的です。
ここから、今日の南風、西ほど強いんだな・・・と考えることができます。
それでは、この状態がこれからどうなるんでしょうか?

ありゃ?東北太平洋側に低気圧。おまけに寒冷前線が北陸日本海側へと延びています。
ひまわり画像を見せつけられて、いきなり何だ?のパターンですよね。
こうなる途中、何が起こっているのか?をアニメにしてみました(ゆっくりアニメにしてあります)。
左側が等圧線と降水(雪)エリアの変化。右側が上空5400m付近の天気図と寒気の中心の様子です。

日中、日本海の等圧線のウネウネ部分に低気圧が発生して、東北を横断。
低気圧からのびる寒冷前線が次第にはっきりしてきて、夜には日本海沿岸に南下してきます。
前線の南側は南西の南風ゾーン。
昨日と比べて気温は急上昇です。
そして寒冷前線、朝までには太平洋側に抜けるので、深夜、長野県は急激に前線北側の北風ゾーンに逆戻り。
北風ゾーンには寒気が流れ込んでいますから・・・・明日、また寒くなるわけです。
それと同時に、日本海の雪雲が再び活発に発生し、北風にのって北陸、そして長野県へ。
水色の降水(雪)の帯がだんだん近づいてくるのがわかりますよね。
で・・・雪雲がどれだけ長野県に流れ込むのか?ですが・・・

時間ごとの降水(雪)をチェックして、県内に一番雪雲が流れ込んでいたのが深夜1時前後。
北部はほぼ全域で長野市内はチラチラか薄っすら、中部は松本付近でチラチラか薄っすら程度?南部木曽谷も薄っすら程度で伊那谷でチラチラ程度でしょうか?
計算値がちょっとずれただけで、県内への雪雲の侵入は大きく変化しそうですから、夕方5時以降の新しい計算値による予報で再チェックが必要です。
このところ、Kasayanは雪雲の侵入の程度と、地上付近と上空の風向と風速の関係についてデータ集積中。
この冬でなにかしらの傾向が見つかれば良いのですが・・・・・
文献を調べたり気象台に行ってレクチャーも受けてみようかと思っています。
5、今日の天気予報は当たるのか?
100%じゃない天気予報。もしハズレるとしたらどうなるんでしょうか?
予報のハズレで失敗しない方法を考えます。
日中暖かくなる傾向という点については問題なし。
ポイントは、今夜の前線通過のタイミングと、雪雲が流れ込み始めるタイミングと程度です。
このあたり、前線通過のタイミングは、気象庁HPの時系列予報(クリック)の風向予想で、南から北に変わる時間をみると簡単にわかるのですが、北部で夕方を予想しているようです。
今日の日中の活動が終わったあとですし、前線通過のタイミングが多少遅れたとしても、夜に雪が降りだすことは間違いないでしょうから、「夜 雪」のタイミングは当たると考えます。
そして雪の程度ですが・・・・昨日の大雪ほどにはならないにしても、今朝のように楽勝な朝ではありません。
正直なところ、長野の雪は教科書以上の経験のないKasayan.
問題の北部・・・長野県北部の大雪注意報(クリック)が発表される基準は、
中野飯山地域 40cm以上
長野地域 20cm以上
山沿い 40cm以上
大北地域 20cm以上
山沿い 40cm以上
ですから、夜の天気予報で注意報が発表されていたら、この基準に照らしてお住まいの地域の積雪をイメージしてみてください。
発表されなかったら・・・北部の中でもエリアごとに、かなりバラツキのある降雪になると思います。
日曜日・・・・これから戸隠あたりまで、久々の大量の雪でも見に行ってくるかな・・・・・・
そうそう・・・年末寒波・・・ありそうで・・・なさそうで・・・・????です。