2010年09月07日

台風9号予想進路と今後の気象状況(9月7日)




 故郷長野の帰ってきた気象予報士Kasayan。久々の長野の天気に慣れるため、毎朝コツコツ天気予報の修行中。おきまりのテレビの天気予報とはちょっと異なる視聴者の視点から、今日の天気予報をチェックしています。

1、今日の一言

 今日の猛暑はこの記事に書いておきましたが、猛暑の見通しについては、週に一回金曜日に気象庁から発表される一か月予報をまとめてありますので、そちらをご覧いただきたいと思います。
  一か月予報まとめ: http://kasayan.naganoblog.jp/e551715.html




 台風9号が、発達しながら今夜にかけて九州に最接近。

 テレビやラジオでは、九州方面の解説が中心になるでしょうから、明日以降、”台風が通過する可能性が高まっている東日本や北日本方面では何が起こる?”ということを中心に、いつもとは違った構成でまとめてみました。

 雨が待ち遠しい地域も多いでしょうし、Kasayanの住む長野県のように実りの秋に果実の落果が気になる地域など様々だと思います。
 猛暑を吹き飛ばし、適度な雨をもたらすだけの恵みの台風であってほしいのですが・・・・

2、台風の予想進路

 何が起こるのか?は、進路に関係してきますから、まずは予想進路図を検討。

 まずは、日本の気象庁が発表した、今朝03時の台風位置と予想進路図から。
   (気象庁予想進路図http://www.jma.go.jp/jp/typh/100924.html




 能登半島に上陸し、東日本~東北南部を通過するのは明日(8日)夜から明後日(9日)午前中にかけて。
 どうしても、予報円の中心に着目してしまいますが、円の端を通過する可能性は低いとしても、若干のブレは想定しておかなければならないのは当然です。

10時50分追記:09時の気象庁発表予想進路が、南よりに大幅に変化し、下に掲載した米軍の予想進路に近くなっています。東日本縦断の可能性が出てきました。

 続いて、韓国気象庁の予想進路図(http://web.kma.go.kr/jap/index.jsp)。




 速度については日本の気象庁とほぼ同じですが、明日(8日)夜に金沢付近に上陸し、長野県北部を通過し、茨城県北部付近へ抜ける予想になっています。
 日本の気象庁の予報円のやや南側を通過することを予想しているといえそうです。

 最後は、米軍発表の予想進路図。
 (https://www.fnmoc.navy.mil/tcweb/cgi-bin/tc_home.cgi




 韓国気象庁よりさらに南側、島根半島をかすめ、若狭湾付近に上陸し、岐阜県、長野県中部を通過し、茨城県南部へ抜けるという予想です。

 こうやって複数の予想進路図を見ると「どれを信じたらイイんだ!」と言い出す方が多いのですが、いずれの予想進路図も、日本の気象庁の予報円の中の話です。

 台風の中心が通過するから最も悪い状況になる・・・というわけではありません。
 雨が問題になる地域、風が問題になる地域、それぞれを問題にして考える必要があります。
 台風の中心が何処を通るのか?で一喜一憂するのではなく、問題になる現象について、「最悪の状況を判断する情報」として、様々な予想進路図を使うべきだと思うのですが、いかがですか?

 新しい観測値をもとに、新たな予想進路図が発表されるたびに予想進路は、より正確になっていくのが通常です。
 「新しい情報をこまめにチェックして」といわれますが、毎時間チェックするわけにもいきません。
 72時間以降、5日後までの予想進路は”04時30分頃、10時30分頃、16時30分頃、22時30分頃”に発表されますから、少なくとも、この時間に新しい予想進路をチェックして、情報をアップデートしたいところです。

16時10分追記15時気象庁発表の台風9号予想進路図では、今朝3時の予想と比較して南よりの進路が予想されており、長野市上空を通過する可能性が高まっています。もっとも、今後さらに南よりのコースをとる可能性もあり、上空強風軸の南下(東谷)に伴いGSM、MSMいずれの計算値も中部地方を南東進する可能性も示唆しています。強雨の時間帯は長くはないと思われますが、局地的にまとまる可能性について注意が必要と考えます。明日(8日18時)のMSMの計算値を追掲載しておきますので参考まで。




3、台風周辺で起こること

 台風周辺でどのようなことが起こるのか?
 海上の波は別として、問題になるのは、雨と風です。
 今日の台風の状況を細かくチェックして、明日から明後日にかけて何が起こるかを考えてみましょう。

【風】
 風速は予想進路図に書かれていますから、一目でわかりますが、風向は予報を見るしかありません。
 風向は地形に影響されやすいのですが、予報は地形の影響もある程度考慮しているので頼りになりますが、地形に影響されるだけに微妙
 また、台風の通過に伴い、風向はドラスティックに変化します。

 そこで、台風周辺でどのような風が吹くのか?・・・「最寄りの風」とは別に「場の風」を把握しておくことは予報を理解する上で効果的です。
 サンプルとして、今日(7日)12時の風の傾向と、それによって起こることをチェックしておきましょう。




 台風には反時計回りに強い風が吹き込むというのは教科書通りですが、それ以外に起こることについて、書き込みをしておきました。
 フェーン現象発生による猛暑と活発化する前線
 台風が進むにつれて、これらの現象が発生するエリアがどう変化するのか?という目で予報をチェックすると、今まで盲目的に見ていた予報も、安全マージンをとってもっと有効に使えるようになるはずです。

【雨】
 風の次は




 着目点は、図に書き込んであります。

 台風と前線がセットになって大雨を降らせるというパターンは梅雨時に多く見られますが、今回も同様のパターン。
 前線付近の上空には強い偏西風が吹いていることが多いので、台風が前線まで北上すると、前線に沿って東へ進むと同時に速度を上げるのが一般的ですが、今回は明日以降、この流れに乗ることになります。
 上空の強い風の位置の計算値のばらつきが、予想進路図の微妙な違いになっていそうですね。

4、台風通過で起こること

【雨】
 上に掲載した、雨の傾向を思い浮かべながら、GSMという計算値が予想している降水の変化のアニメを見てみましょう。




 通常の天気予報で一番使われる計算値ですが(台風進路予想には専用の計算値も使われます)、この計算では、台風のコースが米軍の進路予想とほぼ同じになっています。
 台風の東側の雨の強いエリアがどのように変化するのか?を”傾向として”把握しておくとよいでしょう。

 今日は西日本中心で、南から黒い雨雲がやってきては激しい雨を降らせ、パッと強い日差しがさす・・・そしてまた雨という激しい天気変化が予想されます。
 そして、今夜以降、東日本でそんな傾向が見られるかもしれません。

【風】
 風向は、台風の中心の位置で大きく変化しますから、中心に対して反時計回りに吹くというパターンを思い出して、最新の予想進路図を見ながら臨機応変にイメージしていきます。
 風速は予報円でチェックしますが、一応、計算値でも見てみましょう。




 東日本は、明日(8日)次第に風が強まる可能性が高そうですが、海上の風が強いのは当然として、内陸部は山や盆地の影響が強く、一言で言い表せるものではありません。
 「場の風」は明日強まるとして、「最寄りの風」は予報でチェックすることが必要です。

5、今日の天気

 まず、エリア分けした天気マークの天気予報。







 台風が通過する場合、予報は「・・・のち・・・」という予報が多くなります
白い線で図を大ざっぱにエリア分けしていますが、できれば「のち」の前と後で二つのエリア分けをすると、天気傾向がハッキリと見えてきます
 
 分布予報とかメッシュ予報などという予報もありますが、それらを補助的に見ながら、天気分布を考えるのもよいでしょう。

 また、予報文や天気概況には、マークなどでは伝えられない予報の機微が書かれていますから、予報文は必ず読んでおきたいところです。
 予報文と天気概況http://www.jma.go.jp/jp/yoho/322.html

 今日の雨の様子







 夕立とちがって、前線の雨について、このMSMという計算値はかなり優秀。

 ここまで説明してきたことで、降水の変化の理由はバッチリわかると思います。
 また、天気マークの天気予報のエリア分けと比較して見てください。

 時間があれば、またTwitterや追記で対応したいと思います。


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(当ブログに引用の天気図等は、気象庁、WNIより使用許諾を得ています)