2010年05月12日
天気予報は当たるのか?(5月12日)
故郷長野の帰ってきた気象予報士Kasayan。おきまりのテレビの天気予報とはちょっと異なる視聴者の視点から、今日の天気予報をチェックしています。今日の天気予報は当たるんでしょうか?
1、今日の一言
昨日の雨・・・夕方以降本降りになりましたが、今朝は太陽が顔を出しています。

レーダーを見ると、まだ北海道から関東付近に雨をふらせているようですが、まもなく東海上に抜けて回復へ。
ただ、鳥取県付近に雨雲が観測されています(赤丸)。
なんのことはない小さな雨雲に見えますけど、テレビの天気予報で「季節はずれの寒気が南下して・・」と連呼している寒気による雨雲。
上空に冷たい空気が流れ込んでくると、上昇気流が勢いを増して雨雲が発達しやすくなって大気が不安定と言われますが、山陰では一足早く地上付近に寒気が流れ込んで大気が不安定になっているわけです。
大気不安定な状態・・・これから東日本へと拡大してきますから、長野県付近でも午後にはいきなり雲に覆われて・・・・雨の可能性あり。
北アや北信五岳の高いところでは、なんと雪!になるかも。
そして、一昨日から注意が呼びかけられている遅霜・・・大気不安定をもたらすこの寒気が明日朝に悪さをしそうです。
ということで、今日のお天気放談のキーワードは寒気です。
12時追記:一昨日までは「低温と霜に関する気象情報」だったのですが、今日11時に発表された気象情報は「雪と霜に関する気象情報」になっています。5月に雪に関する情報が発表されるなんて・・・・
原文を引用掲載しておきます。
雪と霜に関する長野県気象情報 第1号
平成22年5月12日11時00分 長野地方気象台発表
■見出し
北部と中部の標高の高い所を中心に、12日夜遅くから13日にかけて雪が降り、積雪となる所がある見込みです。積雪や路面の凍結による交通障害に注意して下さい。また、平地でも霜の降りる所があるでしょう。農作物の管理に注意して下さい。
■本文
[気象状況]
輪島の上空5500m付近には、13日夜にかけて氷点下24度以下の寒気が流れ込み、冬型の気圧配置となる見込みです。
このため、12日夜遅くから13日にかけて、北部と中部の標高が概ね1000メートル以上では雪が降り、積雪となる所がある見込みです。
また、13日から15日にかけて朝は冷え込み、平地でも霜の降りるおそれがあります。
[降雪量の予想]
13日12時までの24時間の降雪量は、北部の山沿いの多い所で、5センチの見込みです。
[防災事項]
標高の高い所を通る道路では、積雪や路面の凍結による交通障害に注意して下さい。
平地でも霜の降りるおそれがありますので、農作物の管理に注意して下さい。
[補足事項]
「雪と霜に関する長野県気象情報」は、状況に特段の変化がない限りこれで終了しますが、今後の気象情報には十分留意願います。
2、全国の予報
テレビやネットでご存じの天気マークの天気予報。使い方次第で何倍にも役立てることができますよ。まずは全国の予報から。「木を見て森を見ない」などと言いますが、天気予報も頭上の天気だけを気にしていてもダメ。
天気の変化は他県からやってきます。

ちょっとわかりにくいエリア分けになっちゃっていますけど、基本的には冬型の天気分布だと思ってください。
日本海側がぐずついて、太平洋側が晴れるというヤツですね。
もっとも今日は寒気の影響=大気不安定が関東付近まで及ぶのでこんな形になりました。
各地の予報文をつまみ読みすると、傘マークの北海道の道東では「雨か雪」なんて書かれていますから、平地での5月の雪の可能性があるんですね。
また、新潟など北陸では「雷を伴う」なんて書かれていて、冬のはじめのブリおこしの雷みたいな状態になっています。
冬型の天気分布と雪や雷・・・今回の寒気の強さをものがたっています。
3、長野県の予報
長野にズーム。見るのは天気マークの天気予報だけ?
「・・のち・・」って何時でしょう? 「所により・・」はマークだけじゃわかりません。

県内の天気マーク・・・雲マークと太陽マークがセットになっていて左側が雲ですから、太陽が顔を出していても、くもりベースの天気が予想されています。
もっとも、北部は「昼前から昼過ぎ 晴れ」ですから、日中晴れと感じる人が多いと思います。
問題は北部と中部で予想されている雨。
北部では「夕方から」ですが、ENDが書かれていません。
中部では「夕方から夜のはじめ頃」と時間限定。
「所により」はどのあたり?は詳しくチェックしておきましょう。
なお、北部の明日の予報は「くもり 時々 雨 山沿い では 夜のはじめ頃 まで 雪」。
予報用語集を見ると、北部の山沿いについて・・・・
この「山沿い」は長野県北部の冬期間(11月頃~3月頃まで)の降雪のみを対象に使用し、「長野」の一部(長野市の一部(旧戸隠村・旧鬼無里村)、高山村の標高800m以上の地域、飯綱町、信濃町、小川村)及び「大町」の大部分(小谷村、白馬村、大町市の標高800m以上の地域)を「山沿い」と呼称します。
・・・と書かれています。
本来3月頃まで使われる用語が5月になっても使われているなんて!・・今回の寒気スゴイですね。
4、一般的な天気図の評
どんな理由でその予報は作られたんでしょうか?理由がわからなければ占いと同じ?テレビの解説は「天気予報の確からしさ」を知るための道具です。

5月になって、冬型の気圧配置と書きこむのにためらって、西高東低の気圧配置と書きこみましたが、長野地方気象台の概況を読んでみたら、気象台は「冬型の気圧配置」という言葉を使っていました。
今日は寒気がキーワードですが、+冬型の気圧配置=冬型の天気分布ということになります。
まあ・・・こんなもんかな?
後は下の図で詳しくチェックしましょう。
5、今日の天気予報は当たるのか?
100%じゃない天気予報。もしハズレるとしたらどうなるんでしょうか?
予報のハズレで失敗しない方法を考えます。
寒気がキーワードなので、ズバリ寒気の中心部分の動きからチェックして行きましょう。
珍しいほど強い寒気なので、たくさん図をつかいますから、面白そうな図のところだけ読むだけでもOK・・・・降水のアニメだけでも良いかも・・・・

-24℃の寒気は3月末頃にやってくる平均的な寒気と同じ。
寒気のカタマリは反時計回りにアメーバのように回転しながら、明日にかけて東北南部を通過していくのがわかります。
寒冷渦といって、これがやってくると急激に大気が不安定になって、雷や突風などシビアな天気をもたらすといわれています。
この時期としては強力なヤツなんで、寒冷渦の「渦」の様子もチェックしておきましょう。

空気の流れを示す矢印が、反時計回りに回転しながら、東北を通過していきますよね。
まさに「寒冷渦」です。
また、まん丸じゃなくてアメーバのような形をしている寒気・・・触手のように出っ張った部分が上空の気圧の谷と対応していて、谷の部分では特にシビアな天気になります。

赤の点線部分が上空の気圧の谷ですが、まさに今日・・・アメーバの触手・・・谷の部分が山陰から東北にかけて通過していくのがわかります。
レーダーで見た今朝の山陰の雨雲・・・・この谷がかかり始めたからなんですね。
で・・・上空の寒気と気圧の谷によって大気不安定になった地上では、どのように雨が降るのか?
具体的な雨の様子ですが・・・・
まず全国を概観。

昨日の雨域は東へ抜けるけど・・・日本海側に筋状の雲ができて北陸以北の日本海側がぐずつく・・・・
長野県付近にズーム・・・上空5500m付近の寒気の様子とセットでアニメ化してみました。

基本的に北アルプス周辺や新潟県境の山々を中心に降水が計算されています。
また、-25℃の寒気(特に青の濃いところ)が南下するにつれて、日本海の海上に筋状の雨雲が発生して、まるで冬の日本海の姿になることがわかります。
今日の県内北部の予報で「所により」と書かれている場所が、これらのエリアということがわかりますよね。
もちろん不安定な天気ですから、盆地でも可能性はゼロではありません。
また、中部も北アを中心とした西側の山々がメインになりますが、南アや八ヶ岳方面もちょっとアヤシイ感じです。
で・・・どこで雪になるのか?ですが・・・

上空の寒気の影響で、地上に近い上空1500m付近で0℃以下の寒気が、今夜には北部を覆ってきます。
ということは、予報用語の山沿い中心ですが、北アはもとより北信五岳の頂上付近、志賀高原などでは雪になってもおかしくなさそうです。
そして、明日朝には中部まで0℃のラインが南下してきますから・・・・遅霜注意ということになります。
で・・・今日の予報・・・・
日中でも北ア方面では雨や雪の可能性は高いですけど、地域を平均的に見ればくもりベースで晴れ間もあるというイメージで構わないように思います。
また、夕方以降、雨がどこで降っても「所により」でカバーしています。
ということで・・・今日の予報は当たる・・・です。
長ーい検討の割にはこんなもんです・・・でも、たくさん資料があってもブログなら読み飛ばせるから、良いですよね?
興味のあるところだけつまみ読みすればイイですから。
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