2010年04月25日
天気予報は当たるのか(4月25日)
故郷長野の帰ってきた気象予報士Kasayan。おきまりのテレビの天気予報とはちょっと異なる視聴者の視点から、今日の天気予報をチェックしています。今日の天気予報は当たるんでしょうか?
1、今日の一言

これ、昨日の夕方、長野市内の地附山から見た志賀高原。
青空の下、上空に積雲の帽子をかぶった白い志賀高原がくっきりと見えていました。
志賀草津ルートの除雪が終わり開通したようですが、近いうちに行ってみよう・・・という気持ちになりました。

今朝の衛星画像・・・・日本付近は晴れのエリア。
天気予報では「行楽日和」の四文字が躍っていると思いますが、北海道付近には「コンマ」の形をした雲。
寒冷渦といって、上空に強い寒気を伴った小粒でもピリリと辛い現象を起こす低気圧の雲です。
北日本はこの渦の影響で雷の恐れがあるのですが、長野県周辺でも午後には大気不安定。
どのあたりがアヤシイ?のかは本文で。
2、全国の予報
テレビやネットでご存じの天気マークの天気予報。使い方次第で何倍にも役立てることができますよ。まずは全国の予報から。「木を見て森を見ない」などと言いますが、天気予報も頭上の天気だけを気にしていてもダメ。
天気の変化は他県からやってきます。

北日本が晴れから取り残されてしまったという感じ。
不安定・・・というコトバ・・・・なんだかよくわからないという方もおられるかもしれませんが、急に雲が広がって、にわか雨や雷雨がありそうな天気・・・と思えばよいです。
3、長野県の予報
長野にズーム。見るのは天気マークの天気予報だけ?
「・・のち・・」って何時でしょう? 「所により・・」はマークだけじゃわかりません。

県内や周辺も太陽マーク一発のところが多くて「問題なし」という感じがしますが・・・・
関東付近はなぜか「のち くもり」マークになっています。
なぜ?ということで、東京の概況を読んでみると「夕方から夜にかけて上空を寒気を伴った気圧の谷が通過する見込みです」なんて書かれています。
東京の予報文を読むと「所により 夕方 から 夜のはじめ頃 雨」なんてことまで書いてあります。
関東の「のち くもり」マークの裏側には小さな傘マークが隠れていたんですね。
で・・・・この影響が県内にあるの?という感じがしてきます。特に県の東部ですよね。
そこで、長野県の概況を読んでみると「高気圧に覆われますが、夕方から夜にかけて上空を寒気を伴った気圧の谷が通過する見込みです。このため、概ね晴れとなるでしょう。」なんて書かれています。
寒気を伴った気圧の谷が通過するけど、影響はないのかよ?・・・・なんか変な概況ですよね。
「概ね」という表現が「完璧な晴れじゃない」ということを意味しているようですけど、わかりにくいですよね。
・・・チェックポイント・・・寒気を伴った気圧の谷の影響です。
4、一般的な天気図の評
どんな理由でその予報は作られたんでしょうか?理由がわからなければ占いと同じ?テレビの解説は「天気予報の確からしさ」を知るための道具です。

北日本が大気不安定になるのはわかりやすいですけど、関東付近も不安定になるのがちょっとわかりにくいと思います。
このあたりは、下で詳しくチェックします。
5、今日の天気予報は当たるのか?
100%じゃない天気予報。もしハズレるとしたらどうなるんでしょうか?
予報のハズレで失敗しない方法を考えます。
まずは、大きな流れをチェック・・・「上空の」というコトバが概況で使われていますから上空の様子も確認するわけです。

上の段・・・上空5500m付近の天気図を見ると、今夜にかけて上空の気圧の谷が北海道付近にやってきます。
この谷のちょっと東側に地上の低気圧が対応しているのがわかりますが、こんな時は、地上の低気圧・・・発達傾向です。
そして、下の段、アニメと同じ地上の天気図ですが、21時の天気図を見ると、太平洋沿岸に二つの弱い高圧部が計算されています。
通常の天気図では省略しちゃいますけど、気圧の高い所の間は微妙に弱い気圧の谷ということになります。
赤の点線の部分、ちょっと雲が広がりやすい感じがしますが・・・・天気マークが「のち くもり」になっている関東付近と一致します。
次は・・・概況にもあった上空の寒気の様子。

強い寒気の第一波はすでに三陸沖に抜けていますけど、今夜北海道を低気圧が通過したあと、上で見た上空の気圧の谷にやや遅れて再び寒気の谷(赤の点線)がやってきます。
昨日までの強い寒気ほどは南下しませんけど、なにしろこの季節としては強い冬の寒気ですから、大気は不安定へ。
地上付近の上空1500mの気温は徐々に上昇しつつありますから、相対的により不安定な感じ。
これをSSIという大気の安定度を示す指数の図で見ると・・・・

北日本付近、茶色に塗られた不安定のエリアになっていて、青い降水が計算されているのがわかります。
で・・・ちょっと目を南に向けると、関東付近も大気が不安定になるようです。
弱い降水まで計算されていますが・・・・東京の概況に書いてあった寒気の影響ですね。
でも、なぜ東北南部をジャンプしてこのあたりが不安定になるんでしょうか?
このエリアもっと詳しく見てみましょう。

夕方18時の風の流れと上空3000m付近の寒気の様子。
上空3000m付近の-10℃以下の寒気がちょうどU字の形をしていて、その頂点が関東甲信付近を通過するのが夕方。
関東甲信の夕方の不安定な天気・・・この高さあたりの寒気がカギを握っているようです。
そして、雨が降りそうな秩父付近には風が集まる場所・・・収束線(シアーライン)が計算されています。
こういった収束線は弱い気圧の谷によくできますが(上の図の地上の非常に弱い気圧の谷に対応)、風がぶつかれば行き場所が無くなった空気は上にいくしかありませんから、上昇流発生・・・・上空には寒気が来ていますからすぐに雲が発達して雨・・・発達が急激なら雷も・・・・
これで全体のイメージがつかめました。
で・・・今日の天気予報は・・・県内の予報文は全域で「晴れ」一発ですけど、こうやって見ると、県の東部では夕方以降雲が広がりやすく、場合によっては雷の可能性もあります。
エリア全体を平均的に見たり、影響の程度を考慮して、気象台は「晴れ」一発にしているとは思いますが、概況の「概ね晴れ」というあいまいな表現・・・・・・。
基本的には当たるわけですけど、県東部・・特に八ヶ岳方面や野辺山方面では午後の雲の広がりや雷の恐れについては念のため気にしておいたほうが良いと思います。
春の陽気に誘われて行った山で雷はカンベンですよね。
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