2010年02月11日
天気予報は当たるのか?(2月11日)
故郷長野の帰ってきた気象予報士Kasayan。おきまりのテレビの天気予報とはちょっと異なる視聴者の視点から、今日の天気予報をチェックしています。今日の天気予報は当たるんでしょうか?
1、今日の一言
昨夜9時と今朝6時の雲の様子。

雨を降らせた低気圧の雨雲はすっかり東海上へ抜けてます。
一晩でずいぶん足早に進むもんですね。
一方、昨夜上海付近にあった低気圧のタマゴが成長して九州の西に迫っています。
雲のエリアが大きくなっているのがわかりますよね・・・発達してるんです。
この低気圧・・・2月1日に南信地方に雪を降らせた低気圧と同じ南岸低気圧。
今回は、前回の雪と違って上空の気温がちょっと高め。
降りだしは雨中心で、次第に雪になるとは思いますが、南信にしろ大騒ぎの関東にしろ雪に変わるタイミングとどの程度積もるのか?を予測するのは非常に難しいところ。
昔、東京の某局、ウェザーセンターのデスクをしていたころ、「銀座と新宿で雪の映像を撮りたいんだけど何時から雪になるんだ」と吊るしあげられ、「雨だ」と答えたらいきなり雪。
散々嫌味を言われて以来、とりあえず「雨の可能性もあるけど念のため取材してくれ」と言うようになりました。
今日はそこまで微妙じゃないですけど、現役の気象予報士には悩ましい一日でしょう。
東京の雪の映像が全国版のニュースで流れたら、その裏で天気図に線を引いている人間がいることを思い出してやってください。
2、全国の予報
テレビやネットでご存じの天気マークの天気予報。使い方次第で何倍にも役立てることができますよ。まずは全国の予報から。「木を見て森を見ない」などと言いますが、天気予報も頭上の天気だけを気にしていてもダメ。
天気の変化は他県からやってきます。

冬型の天気分布は北海道を中心とした北のエリアだけ。
それ以外のエリアは冬と春の空気がせめぎ合い、雪と雨が戦うぐずつきエリアです。
3、長野県の予報
長野にズーム。見るのは天気マークの天気予報だけ?
「・・のち・・」って何時でしょう? 「所により・・」はマークだけじゃわかりません。

冬と春がせめぎ合う長野県・・・南部は「のち 雨か雪」の春優勢エリア。
中部は「のち 雪か雨」の冬優勢エリア。
そして、北部は・・・・冬楽勝の「雪」
もっとも、今夜遅くになると冬が優勢になってきますから、明日朝には南部の地面も白くなると思います。
そして・・・・県内全域、降りだしは「昼過ぎ」(12時~3時)ですね。
ここで、関東の天気マークを横目でチラッと見ると、傘マークと雪マークが混在していて悩ましさを想像させてくれます。
4、一般的な天気図の評
どんな理由でその予報は作られたんでしょうか?理由がわからなければ占いと同じ?テレビの解説は「天気予報の確からしさ」を知るための道具です。

この時期の南岸低気圧ではお約束の解説パターンです。
寒気が十分に南下しているわけではありませんが、低気圧が発達しながら関東の沖へと進んでくると、低気圧が、まるで掃除機のように北から地上付近に寒気を引きずりおろしてきます。
このため、雨が雪に変わるわけですが、低気圧が十分に発達しなかったり、進むコースが北よりになったりすると、寒気が十分の下りてこないので雪になりません。
一方、低気圧が陸から離れて通過すると雨のエリアが海上に出てしまって、せいぜいチラチラと雪が舞う程度で終わってしまいます。
そのほか地上付近の気温とか、局地的な低圧部のでき具合、風の吹き方など様々な要素が複雑にからみあって雪になるので、気象マニアには考える素材として面白い現象ですけど、現実にリスク回避の情報として使うなら、実況と新しい予報をコマメにチェックして対応するのが一番だと思います。
5、今日の天気予報は当たるのか?
100%じゃない天気予報。もしハズレるとしたらどうなるんでしょうか?
予報のハズレで失敗しない方法を考えます。
まずは、今日降ってくるものの(この言い回しを汲んでください)降りだしと範囲をチェックしておきましょう。

予報文には降りだしが「昼過ぎ」と書いてありますから、正午の降水の様子をまとめてみました。
岐阜県や富山県方面から雨(雪)雲が押し寄せてきてきます。
はじめは北アルプスが雲をブロックしようとしますが、次第に北アルプスより背の高い発達した雲がやってきて、ダムが決壊するように県内に雨(雪)雲が広がります。
そして、いったん広がってしまえば、県内全域雨(雲)エリアになって、夜遅くまで・・・・。
で・・・・問題の雨・雪の区別(いまさら長野県内じゃ問題でもない?)。
区別のメインは気温ですから、まずは上空の気温からチェックしていきます。

一般的に、冬場に雪が降るか降らないかは上空5500m付近の気温から考えます。
普通、-30℃なら雪なんていうのですが、今夜-30℃の寒気ははるか北海道上空にあります。
(ちなみに、前回南部で雪が降ったときは本州まで南下していました)
これじゃ雪にならないじゃん!・・・・ということなんですけど、そうは問屋が卸さない。
下層・・・上空1500m付近の気温の様子もチェックすると・・・・

上空は気温が高めでも、地上付近には寒気が南下してくるようです。
上の天気図のアニメに書き込んでおきましたが、掃除機のような低気圧が地上付近に寒気を引きずり下ろすんですね。
そして、氷ができる0℃の線が県南部・関東付近まで。
この線より北では落ちてくるものが雪になる可能性が急増してきます。
ただ、地上付近の気温が高ければ融けてしまうので、-6℃まで下がらなければ、状況によって雨にも雪にもコロコロと変わってしまいます。
だから、南部は「雨か雪」、中部は「雪か雨」、-6℃の線がかかっている北部は「雪」の予報なんですね。
12時追記:北部の降りだしがちょっと早めだったので、寒気南下が間に合わず、雨で降りだしているところもあるようです。
さらに、地上付近に寒気が流れ込んでくる様子をチェック。

午後6時頃の上空1500m付近の気温をもっと詳しく見てみると、0℃の線が関東付近でググッと南下していることがわかります。
長野県南部よりずっと下がっていますよね。
だから、東京でも雪の可能性が高まっているわけです。
で・・・予想降雪量は、正直なところ今のKasayanには正確に予測できません。
とりあえず、気象庁が発表している分布予報のうち、午後6時からの6時間の降雪の様子を掲載しておきます。

21時30分追記:
中南信中心に大雪注意報が発表されています。
予想降雪量がハッキリしてきたので、注意報の原文には予想降雪量が記載されています。
なんだか今日はアクセス数が多いようなので、一部抜粋して掲載しておきますが、気象庁HPで原文は読んでくださいね。
ここまでは、お天気の教科書にも書いてあることをなぞっただけ。
本当はここから、地形の効果や地上付近の風の通り道、風がぶつかる場所などを詳しくチェックしていく必要があるのですが、ブログではこの程度にしておきます。
で・・・・今日の天気予報。
何か降るのは間違いなし。別のシナリオを考える意味はありません。
そして降りだし・・・予報は「昼過ぎ」ですけど、県の西のエリアは「昼前後」くらいに考えておけば十分でしょう。
また、雨と雪の比率については、遅くとも夜には南部でも雪になると考えておけばよいですし、予報自体が「雨か雪」なんて書いてあるわけですから、ハズレようもないでしょう。
それに、この季節、雪に対して準備OKの長野県ですから、雪と考えておくのが無難にきまっています。
ということで、今日の予報は当たる・・・・です。
15時30分追記:
ライブカメラで見る限りですが、降りだしは標高の高い所以外は雨主体です。
上で書いたように「遅くとも夜には雪になる」という流れで考えておいてください。
午前9時の観測で、輪島上空1500mでー3.9℃。推定上、長野県中部まで0℃のラインがかかっていますが、県上空に弱い低圧部が発生し、関東付近や東海沖の暖かい空気が下層に流れ込んでいると考えます。
このため、地上気温ほど雪(雨)雲下層が冷えておらず、雨主体になっていると思われます。
雪に変化する直前、過冷却といって0℃以下の雨が降り、電線着氷などの可能性が考えられます。
この点注意してください。着氷注意報(珍しいですね)が出ています。

そうそう・・・昨夜の記事に、昔雑誌に連載していた記事の草稿を載せておきました。
このブログの天気チェックの仕方が変わっているのはなぜ?がわかると思いますので、よかったら読んでみてください。
【オマケ】
低気圧が発達するパワーの源・・上空の気圧の谷の様子と、地上付近の空気の流れの図が作ってありますので、興味のある方はどうぞ・・・・


当ブログの記事等に関して、ご質問・ご意見等がありましたら、
kasayangw@yahoo.co.jp
までメールしてください。
可能な限り返信いたします。
1、今日の一言
昨夜9時と今朝6時の雲の様子。

雨を降らせた低気圧の雨雲はすっかり東海上へ抜けてます。
一晩でずいぶん足早に進むもんですね。
一方、昨夜上海付近にあった低気圧のタマゴが成長して九州の西に迫っています。
雲のエリアが大きくなっているのがわかりますよね・・・発達してるんです。
この低気圧・・・2月1日に南信地方に雪を降らせた低気圧と同じ南岸低気圧。
今回は、前回の雪と違って上空の気温がちょっと高め。
降りだしは雨中心で、次第に雪になるとは思いますが、南信にしろ大騒ぎの関東にしろ雪に変わるタイミングとどの程度積もるのか?を予測するのは非常に難しいところ。
昔、東京の某局、ウェザーセンターのデスクをしていたころ、「銀座と新宿で雪の映像を撮りたいんだけど何時から雪になるんだ」と吊るしあげられ、「雨だ」と答えたらいきなり雪。
散々嫌味を言われて以来、とりあえず「雨の可能性もあるけど念のため取材してくれ」と言うようになりました。
今日はそこまで微妙じゃないですけど、現役の気象予報士には悩ましい一日でしょう。
東京の雪の映像が全国版のニュースで流れたら、その裏で天気図に線を引いている人間がいることを思い出してやってください。
2、全国の予報
テレビやネットでご存じの天気マークの天気予報。使い方次第で何倍にも役立てることができますよ。まずは全国の予報から。「木を見て森を見ない」などと言いますが、天気予報も頭上の天気だけを気にしていてもダメ。
天気の変化は他県からやってきます。

冬型の天気分布は北海道を中心とした北のエリアだけ。
それ以外のエリアは冬と春の空気がせめぎ合い、雪と雨が戦うぐずつきエリアです。
3、長野県の予報
長野にズーム。見るのは天気マークの天気予報だけ?
「・・のち・・」って何時でしょう? 「所により・・」はマークだけじゃわかりません。

冬と春がせめぎ合う長野県・・・南部は「のち 雨か雪」の春優勢エリア。
中部は「のち 雪か雨」の冬優勢エリア。
そして、北部は・・・・冬楽勝の「雪」
もっとも、今夜遅くになると冬が優勢になってきますから、明日朝には南部の地面も白くなると思います。
そして・・・・県内全域、降りだしは「昼過ぎ」(12時~3時)ですね。
ここで、関東の天気マークを横目でチラッと見ると、傘マークと雪マークが混在していて悩ましさを想像させてくれます。
4、一般的な天気図の評
どんな理由でその予報は作られたんでしょうか?理由がわからなければ占いと同じ?テレビの解説は「天気予報の確からしさ」を知るための道具です。

この時期の南岸低気圧ではお約束の解説パターンです。
寒気が十分に南下しているわけではありませんが、低気圧が発達しながら関東の沖へと進んでくると、低気圧が、まるで掃除機のように北から地上付近に寒気を引きずりおろしてきます。
このため、雨が雪に変わるわけですが、低気圧が十分に発達しなかったり、進むコースが北よりになったりすると、寒気が十分の下りてこないので雪になりません。
一方、低気圧が陸から離れて通過すると雨のエリアが海上に出てしまって、せいぜいチラチラと雪が舞う程度で終わってしまいます。
そのほか地上付近の気温とか、局地的な低圧部のでき具合、風の吹き方など様々な要素が複雑にからみあって雪になるので、気象マニアには考える素材として面白い現象ですけど、現実にリスク回避の情報として使うなら、実況と新しい予報をコマメにチェックして対応するのが一番だと思います。
5、今日の天気予報は当たるのか?
100%じゃない天気予報。もしハズレるとしたらどうなるんでしょうか?
予報のハズレで失敗しない方法を考えます。
まずは、今日降ってくるものの(この言い回しを汲んでください)降りだしと範囲をチェックしておきましょう。

予報文には降りだしが「昼過ぎ」と書いてありますから、正午の降水の様子をまとめてみました。
岐阜県や富山県方面から雨(雪)雲が押し寄せてきてきます。
はじめは北アルプスが雲をブロックしようとしますが、次第に北アルプスより背の高い発達した雲がやってきて、ダムが決壊するように県内に雨(雪)雲が広がります。
そして、いったん広がってしまえば、県内全域雨(雲)エリアになって、夜遅くまで・・・・。
で・・・・問題の雨・雪の区別(いまさら長野県内じゃ問題でもない?)。
区別のメインは気温ですから、まずは上空の気温からチェックしていきます。

一般的に、冬場に雪が降るか降らないかは上空5500m付近の気温から考えます。
普通、-30℃なら雪なんていうのですが、今夜-30℃の寒気ははるか北海道上空にあります。
(ちなみに、前回南部で雪が降ったときは本州まで南下していました)
これじゃ雪にならないじゃん!・・・・ということなんですけど、そうは問屋が卸さない。
下層・・・上空1500m付近の気温の様子もチェックすると・・・・

上空は気温が高めでも、地上付近には寒気が南下してくるようです。
上の天気図のアニメに書き込んでおきましたが、掃除機のような低気圧が地上付近に寒気を引きずり下ろすんですね。
そして、氷ができる0℃の線が県南部・関東付近まで。
この線より北では落ちてくるものが雪になる可能性が急増してきます。
ただ、地上付近の気温が高ければ融けてしまうので、-6℃まで下がらなければ、状況によって雨にも雪にもコロコロと変わってしまいます。
だから、南部は「雨か雪」、中部は「雪か雨」、-6℃の線がかかっている北部は「雪」の予報なんですね。
12時追記:北部の降りだしがちょっと早めだったので、寒気南下が間に合わず、雨で降りだしているところもあるようです。
さらに、地上付近に寒気が流れ込んでくる様子をチェック。

午後6時頃の上空1500m付近の気温をもっと詳しく見てみると、0℃の線が関東付近でググッと南下していることがわかります。
長野県南部よりずっと下がっていますよね。
だから、東京でも雪の可能性が高まっているわけです。
で・・・予想降雪量は、正直なところ今のKasayanには正確に予測できません。
とりあえず、気象庁が発表している分布予報のうち、午後6時からの6時間の降雪の様子を掲載しておきます。

21時30分追記:
中南信中心に大雪注意報が発表されています。
予想降雪量がハッキリしてきたので、注意報の原文には予想降雪量が記載されています。
なんだか今日はアクセス数が多いようなので、一部抜粋して掲載しておきますが、気象庁HPで原文は読んでくださいね。
上田地域 [発表]大雪,着雪注意報 [継続]着氷注意報
雪 12日明け方まで
24時間最大降雪量 菅平周辺 25センチ 菅平周辺を除く地域
15センチ
着氷 12日明け方まで
付加事項 降雪による交通障害
佐久地域 [発表]大雪,着雪注意報 [継続]着氷注意報
雪 12日明け方まで
24時間最大降雪量 25センチ
着氷 12日明け方まで
付加事項 降雪による交通障害
松本地域 [発表]大雪,着雪注意報 [継続]着氷注意報
雪 12日明け方まで
24時間最大降雪量 聖高原周辺 20センチ 聖高原周辺を除く地
域 15センチ
着氷 12日明け方まで
付加事項 降雪による交通障害
乗鞍上高地地域 [発表]大雪,着雪注意報 [継続]なだれ,着氷注意報
雪 12日明け方まで
24時間最大降雪量 20センチ
着氷 12日明け方まで
付加事項 降雪による交通障害
諏訪地域 [発表]大雪,着雪注意報 [継続]着氷注意報
雪 12日明け方まで
24時間最大降雪量 15センチ
着氷 12日明け方まで
付加事項 降雪による交通障害
ここまでは、お天気の教科書にも書いてあることをなぞっただけ。
本当はここから、地形の効果や地上付近の風の通り道、風がぶつかる場所などを詳しくチェックしていく必要があるのですが、ブログではこの程度にしておきます。
で・・・・今日の天気予報。
何か降るのは間違いなし。別のシナリオを考える意味はありません。
そして降りだし・・・予報は「昼過ぎ」ですけど、県の西のエリアは「昼前後」くらいに考えておけば十分でしょう。
また、雨と雪の比率については、遅くとも夜には南部でも雪になると考えておけばよいですし、予報自体が「雨か雪」なんて書いてあるわけですから、ハズレようもないでしょう。
それに、この季節、雪に対して準備OKの長野県ですから、雪と考えておくのが無難にきまっています。
ということで、今日の予報は当たる・・・・です。
15時30分追記:
ライブカメラで見る限りですが、降りだしは標高の高い所以外は雨主体です。
上で書いたように「遅くとも夜には雪になる」という流れで考えておいてください。
午前9時の観測で、輪島上空1500mでー3.9℃。推定上、長野県中部まで0℃のラインがかかっていますが、県上空に弱い低圧部が発生し、関東付近や東海沖の暖かい空気が下層に流れ込んでいると考えます。
このため、地上気温ほど雪(雨)雲下層が冷えておらず、雨主体になっていると思われます。
雪に変化する直前、過冷却といって0℃以下の雨が降り、電線着氷などの可能性が考えられます。
この点注意してください。着氷注意報(珍しいですね)が出ています。

そうそう・・・昨夜の記事に、昔雑誌に連載していた記事の草稿を載せておきました。
このブログの天気チェックの仕方が変わっているのはなぜ?がわかると思いますので、よかったら読んでみてください。
【オマケ】
低気圧が発達するパワーの源・・上空の気圧の谷の様子と、地上付近の空気の流れの図が作ってありますので、興味のある方はどうぞ・・・・


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