2011年09月02日
台風12号の動向と雨や風の実況把握方法(9月2日)
本日は早朝から外出するので(台風対策・・・)、朝は簡易な記事とし、昼前後と夜に更新あるいは追記いたします。 12時30分追記あり、18時45分追記あり |
いよいよ週末の台風上陸・・・・役所の防災担当者の方をはじめ、この週末を24時間体制で台風対策することを余議なくされた方々の御心中察します。
今日もテレビやネットの天気予報にプラスアルファになる?話を中心に・・・・
米軍台風進路予想(TC Warning Graphicをクリック。日本時間は+9時間)
http://www.usno.navy.mil/JTWC/
気象庁5日間予報
http://www.jma.go.jp/jp/typh/typh5.html
台風情報(文字情報:台風に関するニュースの元ネタ)
http://www.jma.go.jp/jp/typh/typh_text.html
さて、今回の台風、台風が大型で影響範囲が大きいため、高潮や地形的に強風が吹きやすいなど風向に関する被害を考える場合以外に、ピンポイントで上陸地点を考えても生産的ではありません。
むしろ、気象庁発表の台風情報(文字情報や進路図等)を適時参考にし、「何が起こるのか?」「いつ起こるのか?」「いつまで続くのか?」「どうして起こるのか?」などと考えつつ実況把握に努め、目先直後に起こりうることを想定したほうが防災上非常に重要だと思います。
そこで、まずは実況把握について、Kasayanがオススメする一つの方法をサンプルを使ってまとめておきたいと思います。
気象庁HP: http://www.jma.go.jp/jp/radnowc/
以下の図は、昨日17時頃、山口県方面で一時間に50ミリを超える雷雨となった時の様子。

まず、多くの方が雨の降り方をチェックする際に使用すると思われる気象レーダー。
ザッと考えられるチェック方法①~③を書きこんでおきました。
直近の画像をチェックするだけでなく動画表示をして、雨雲の発達・衰弱や移動の様子を把握するのは当然ですが、今回の大雨は台風に流れ込む大量の暖湿気によってもたらされますから、「どこで暖湿気が上昇して雨雲を発達させるのか?」に着目することが必要です。
重要なのは、まず「地図を開いて地形を把握」すること。
天気予報では、「暖湿気が山にぶつかって・・・」と説明されますが、上昇気流が発生するのは山にぶつかる場合だけではありません(昨日の関東の大雨は昨日の記事参照)。
山を迂回した風が、山の風下で合流(収束)する場所でもライン状に雨雲が発生し、大雨をもたらします(シアーラインによる雨)。
昨日の山口県方面の大雨がそれ。

風の収束は基本的にアメダス風向観測値を用いて考えることになります。
地上の地形が影響するため判断が難しいと思いますが、細かな観測値にこだわらず、地形を意識しながら大ざっぱに考えるのがコツです。
また、レーダーのように観測時間をさかのぼって、風向変化も把握するようにしてください。
ちなみに、昨日のレーダー画像に、MSMという計算値の風の流れ(流線)を重ね合わせて見たものが以下の図ですが・・・・

島根県・広島県の県境にある1000m級の山を迂回した風が山口県付近で合流して帯状の強雨帯が形成されており、計算値の流線から降水帯を予測したり、アメダスを使って目先の大雨を予測することが有効であることを物語っています。
このような現象は、上記地域に限らず、今日は前線に吹き込む暖湿流で雨が活発になっている北海道や被災地も含めて、全国的に発生する可能性が考えられます。
台風の北上に伴って風向が少しづつ変化して、大雨の位置も微妙に変化しますから、台風の動きも意識しつつ、南東斜面を中心に実況把握をするのはもちろん、風の収束についても着目してチェックしてみてください。
なお、南東斜面に警戒を要するのは、基本的に台風の東側。
昨日の山口県のように、台風の西側では北寄りの風が吹き、強い暖湿流が流れ込んでくるおそれもありますから注意してください。
時間もありませんから、いつものMSMという気象庁の計算値を掲載しておきます。
非常にリアルに見えるので、「自分の頭上は大丈夫か?」という目で見てしまいがちですが、あくまで傾向を表示しているものと考えて、実況把握をする際の参考資料にしてください。





中間を補完するデータ(同じMSMモデル)WeatherReport
http://www.weather-report.jp/com/professional/msm/fusoku/chushikoku.html
【2日21時拡大】


12時30分追記 今朝の記事は実況把握の方法を中心に書きましたが、テクニックばかりで大雨を裏付ける現象をイメージする情報に欠けていました。 そのため、暖湿流のイメージがイマイチ沸かなかった方もおられたかも? テレビの天気予報でも、「台風の回りを反時計回りに回って流れ込んだ暖かく湿った風のせいで・・・」という解説とともに赤の矢印が表示されたりすると思いますが・・・・。 ![]() 黄色の部分が相当温位350Kというとても湿った暖かい空気を表しています。 台風の目の周辺に上昇気流の強い場所があるので、まるで竜巻のように上空に暖湿気が吸い上げられている様子が計算され、その東側から日本に暖湿気が流れ込んでいます。 そして、緑の部分・・・乾燥して冷たい空気。 北海道付近で前線のまとまった雨が降っていますが、暖かい空気と冷たい空気がぶつかっているから・・・ 本当は黄色と緑の部分が接しているんですけど、わかり易いように両極端の性質の空気を表示させて間を開けて表示しました。 日本全国どこでも上昇気流さえ発生すれば大雨になるというのが理解していただけました? 次はノロノロの理由・・・テレビの天気予報で伝えられてました? ![]() 今夜21時の台風と台風を押し流すジェット気流の位置関係。 緑色のジェットの主軸は大陸沿岸にありますけど、その南縁はそこそこ日本海沿岸に近いんですよね・・・・ 流れがU字になっている部分・・・上空の気圧の谷が計算以上に深まれば、台風が多少早めに北東進したり、上陸直前にフラフラと東へ流れたりということがあるかもしれません。 最後は、今朝の記事の補足。 レーダーを見ていると、アメダスで確認した地上付近の風と雲の流れる方向が異なることに気付かれた方もおられるのでは? 暖湿気が山にぶつかったり収束したりして雨雲が発達するわけですが、発達した雲は上へモクモク・・・地上付近の風向と上空の風向は異なりますから、 発達した雨雲は上空約3000m付近の風に流されやすい傾向にあります。 上空の流れをチェックするには・・・・ ![]() ウインドプロファイラというスゴイ武器が気象庁にありますから、アメダスと併用してこれもチェックしてみてください。 ウィンドプロファイラ: http://www.jma.go.jp/jp/windpro/ |
18時45分追記 夕方のニュースを横目で見ていましたが、「台風の東側に湿った空気が・・・南東斜面で雨雲が活発になって・・・」ばかり。 予想される降水量も気象庁発表をそのまま伝えるだけなので、なんで気象予報士が解説しなくちゃならないの?・・・いくら台風の予想は大本営・・・気象庁発表しか許されていないとしても、そろそろ全局横並びの内容からは脱却してもらいたいと思います(自分が担当していないから言えるんですけどね・・・) 最新のシミュレーションデータ(15時初期値MSM)を明日の午後までまとめておきました。 ![]() ![]() ![]() ![]() また、実況把握の参考になる資料・・・さらに掲載しておきました(自分が把握するために作ったものの流用だったりして)。 上空の風のほうが雨雲発達と対応が良くなっているのが山梨県方面。 観測地点は少ないですけど、アメダスでらちが明かない場合はウィンドプロファイラも多用してみてください。 ![]() ![]() ![]() |
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