2011年09月06日

台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


 昨日のニュースなどで解説されていた紀伊半島の大雨の原因・・・・どうも腑に落ちなくて様々考えていたのですが・・・・昨夜ゴソゴソとデータをまとめていたら、ちょっとした結果が出てしまいました。
 
 今日は北日本の大雨をチェックする必要があるのですが、紀伊半島の大雨の原因を生かすことができるかもしれない?ので、まずは「紀伊半島の大雨・・本当の理由!」と題して(週刊誌みたいなタイトルですね)、まとめた結果をご紹介しておきます。


1、紀伊半島の大雨・・・・本当の理由!!


 台風12号に伴う紀伊半島の大雨の原因について、天気予報やニュースのどの番組でも、「暖かく湿った空気が紀伊山地南東部にぶつかって上層気流を作り激しい雨になった」、さらに「台風がゆっくりと進だため激しい雨が降り続いた」と解説されています。

 確かに紀伊半島南東部を中心に降水量は多くなっていますし、長時間雨が降り続きました。

台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


 でも・・・・本当に理由はそれだけでしょうか?

 台風がゆっくりと進んだため強雨が続き、台風の四国上陸によって台風本体の雨雲の影響も加わったことは容易に想像できますし、解説としては正しいと思います。
 ただ、3日夜から4日未明にかけて被害が集中しているようですし、被災者のインタビューなどを聞いていると「夜中に屋根に穴が開くような強い雨が降った」というような話を耳にします。

 アメダスの降水量と風向の観測値を時系列で見てみましょう。

台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


 紀伊半島のアメダスでは午前3時~4時に、降水量が前後の時間の2倍~7倍も増え、短時間に風向が変化しています。

 大雨が続くと土砂災害が発生しやすくなるのは当然ですが、紀伊半島のようにもともと降水量が多いところでは排水能力も高くなっていると思われますから、それだけで短時間に多数の場所で災害が発生するとは思えません。
 そこで、大雨が続いて限界状態にあった降水と排水の均衡を打ち破る大雨が短時間に降り、災害の引き金を引いてしまったとは考えられないでしょうか?

 そうだとしたら、降水と排水能力の均衡を打ち破る短時間の大雨がどのようなメカニズムで降ったのか?が、今回の紀伊半島の災害の原因の本質であり、今後の防災上の資料になると思われます。
 
 少々興味深い資料がまとまったのでご紹介します。

台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


 4日03時の暖かく湿った空気(雨の原料:以下暖湿気と呼ぶ)と上空1000m付近の風の様子を、MSMというシミュレーションデータで立体的に表現したものです。

 紀伊半島の東側に南南東方向から強い暖湿気が流れ込んでいますが、他方、西側から西~南西の風が吹きこんで、急激に風向が変化する場所が形成されています(上段の図の黄色の点線)。
 いわゆる収束線(シアーライン)と呼ばれ、空気の流れが集中して上昇気流が発生する線状の場所といえますが、その場所であたかも壁のように暖湿気が上昇していることがわかります(中段の立体図と下段の断面図)。

 すなわち、収束線に沿ってライン状に積乱雲が発達していたことが想定され、収束線の形成とともに急激に降水量が増大したこと、そして通過とともに急激に降水量が減少したことが説明できます。
 また、収束線の通過に伴い風向が急激に西寄りに変化したことも説明できます。

 風向について実際の観測値も、以下の結果を示しており、収束線が形成されていたことを示唆しています。

台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


 ウィンドプロファイラによる上空の風向は明らかに収束線の形成を示しており、地形の影響や発達した積乱雲からの下降流の影響を受けやすい地上のアメダスにおいても、大雨の前(午前1時)に収束の場が読みとれます

 以上ですが、説得力があったでしょうか?

 もちろん、紀伊山地の地形が上昇気流の形成に大きな役割を果たしたことは確かだと思いますが、急激な降水量の増大はそれだけで説明するのは困難です。
 ニュース等で解説されていた原因に加えて、収束線の形成と通過の両方が今回の大雨の原因として考えられるのではないでしょうか?


 大雨が続いた後に、限界を超える短時間の強雨
 この組み合わせのタイミングを探ることが今後の防災に役立つのでは?と考えた次第です。


2、今日の天気


 北海道では昨日から大雨が続いています。

台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


 なんでこんな帯状の雨が降るのか?気圧配置から・・・・

台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


 台風13号を回る暖かく湿った空気(暖湿気)が、午前中は北海道東部から、台風が北上する午後には北海道北東部から流れ込み、元台風12号が運び込む大陸の涼しい空気ぶつかって雨雲が発達するというメカニズム。

 同じ所で大雨が降り続く・・・という、一昨日あたりどこかで聞いたような現象が起こるので、ニュースではトップ項目、天気予報では警戒が呼びかけられています。
 
 短期予報解説資料というプロ用の資料でもうちょっと詳しく見ると・・・・

台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


 暖湿気と涼しい空気がぶつかる場所・・・シアーラインと表現されています。
 今夜にかけて少しずつ北東に進むようです。

 では、暖湿気の様子を詳しくチェックしてみましょう。

台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


 水色に塗られた湿り気をたくさん含んだ空気と乾燥した空気が黄色の線付近で接触し、北海道付近でぶつかる様子がわかると思います。

 もうちょっとリアルに・・・・

台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


 本州方面の暖湿気は南岸まで下がっていますが、台風13号に近い北海道には陸地まで流れ込む様子がわかるりますよね。

 あと・・・いきなりですが・・上空の寒気もチェックしておきます。

台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


 冷涼乾燥空気が南下しているということは、上空に寒気が流れ込んでいるわけで・・・寒気が流れ込めば本州でも大気が不安定になる場所・・・夕立が発生する場所が考えられるからです。

 夜には-10℃の寒気が南下してきますから、そこそこ不安定な所も出てくるんじゃないでしょうか?

 ということで、北海道の大雨と、夕立が発生する場所を気にしながら具体的な雨の様子をチェック。

台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)


 見ていただければわかりすよね・・・・北海道の大雨は一目瞭然・・・関東付近の夕立がちょっとアヤシイ

 最後にオマケ・・・・寒気をもたらしたり、台風13号を北上させている上空の気圧の谷と偏西風の様子を掲載しておきます。

台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)



 
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 可能な限り返信いたします。

台風13号と北海道の大雨、紀伊半島大雨検証(9月6日)

(当ブログに引用の天気図等は、気象庁、WNIより使用許諾を得ています)

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Posted by kasayan at 06:43│Comments(2)雑記
この記事へのコメント
kasayan様 初めて質問いたします。
私は千葉県在住の40代男性です。
私は台風が大嫌いで何時も台風が関東方面に来るか気になって仕方
ありません。
そこで 質問なのですがこれから10月末までの台風シーズンの
①台風の発生数の傾向(例年比)など。
②台風の関東方面への上陸傾向(太平洋高気圧の勢力・偏西風の南下の時期)など。
最近こちらのブログを発見してとてもファンになりました。
お時間がありましたらどうか教えて下さい。
Posted by ハルパパ at 2011年09月06日 12:18
>>ハルパパさん
 はじめまして。
 ①台風発生数については気象庁HPに掲載されています。
http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/typhoon/statistics/generation/generation.html

 ②関東への上陸傾向は・・・・・公の統計が無かったと思いますので・・・・
  気象会社などでは統計をとっているところがありますが、私個人では持っていません。
  今年の傾向については1か月予報で判断するしかありませんが、先の12号のように、関東上陸と見せかけて・・・・四国上陸なんてこともありますから・・・
 目先のことすら不確定要素大ですからあまり意味がないかと思います。

 これからもよろしくお願いいたします。
Posted by kasayankasayan at 2011年09月06日 17:01
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