2009年12月17日

大雪に関する情報(12月17日)

 今夜も晩飯あとに、一杯飲むのをヤメにして・・・長野の天気予報のトレーニング!
さて・・・・・・と・・・・・

 長野地方気象台・・・ついに今年はじめての「大雪に関する情報」を発表しました!

 それなに?って方もおられますよね?
 テレビの大雪のニュースや天気予報の中で、雪かきをしている人の映像をバックにして、「○日△時まで 多い所で ○○地方××センチ」なんていうスーパーが出ることがありますが、そのスーパーの元ネタです。

大雪に関する情報(12月17日)


 これ、テレビ局の記者(東京では局駐在の予報士)が、元ネタの情報を簡略化してスーパーにしたりするのですが、ネット社会なんですから、原本を読まなければもったいない

 気象庁のHP(クリック)で見ることができますが、とりあえずこちらにも引用しておきます。
 ずいぶん長い文章ですが、時間がなければ「予想降雪量」「防災事項」だけ読んでおくだけでOKです。

大雪に関する長野県気象情報 第1号

平成21年12月17日16時15分 長野地方気象台発表

(見出し)
県内では、北部の山沿いや西側の地域を中心に、17日夜遅くから20日にかけて断続的に強い雪が降り、大雪となる所がある見込みです。路面凍結などによる交通障害、電線などへの着雪に注意して下さい。

(本文)
[気象状況]
 日本の上空には、強い寒気が流れ込んでおり、冬型の気圧配置が強まっています。県内上空約5000メートルにも、すでに氷点下30度以下の寒気が流れ込み始めており、北部の山沿いや西側の地域を中心に、断続的に雪が降り続いています。
 今後、19日にかけて、県内上空は氷点下36度以下の強い寒気に覆われ、日本付近では冬型の気圧配置がさらに強まる見込みです。
 このため、17日夜遅くから20日にかけて、北部の山沿いや西側の地域を中心に断続的に強い雪が降り続き、大雪となる所があるでしょう。また、北部の平地でも積雪となる見込みです。
 
[予想降雪量]
 18日18時までの24時間に、いずれも多い所で、

 北部 大北地域山沿い   :50センチ
           平 地   :20センチ
     長野地域山沿い   :30センチ
           平 地   :10センチ
      中野飯山地域    :30センチ
 中部 乗鞍上高地地域   :20センチ
    松本地域の聖高原周辺と
      上田地域の菅平周辺:15センチ
      佐久地域      :10センチ
      その他の地域    : 5センチ
 南部  木曽地域        :15センチ
      その他の地域    : 5センチ

の見込みです。
 18日の夕方以降はさらに強まり、降雪量が多くなるでしょう。

[防災事項]
 雪による視程障害、積雪や路面凍結などによる交通障害に注意して下さい。また、電線や架線、樹木への着雪などにも注意して下さい

[補足事項]
 次の「大雪に関する長野県気象情報」は、18日06時ころ発表する予定です。


 本文中の「気象状況」の部分を読むと、なんだか天気予報のキャスターが言うコメントと同じだなぁ・・なんて気がしませんか?
 手抜きのキャスターは、解説用の天気図に専門天気図から寒気のエリアだけ書き写して、この情報と同じ内容をコメントするだけだったりします。

 この文章を読んだら、①氷点下30℃以下の寒気が入っていて、さらに氷点下36度の寒気まで入るってことはどういう意味があるんだよ?とか、②北部の山沿いや県の西側の地域って具体的にドコだよ?とか、③断続的ってどういう意味だよ?ってことが疑問になりますよね?

 ブログは読み飛ばすことができるから・・・いつものように情報テンコ盛りで・・・・
面白そうな図や、気になる情報だけ拾い読みしていだだけでも、気象庁発表の大雪情報の理解も多少深まる・・・・はず・・・だといいな・・・・

 まず、テレビの天気予報でもご覧になったはずの上空の寒気の様子から確認しておきます。

大雪に関する情報(12月17日)


 上空の寒気といえば、紺色の寒気のエリアの動きを見せるのが定番ですけど、自分の住んでいるエリアの寒気の位置はイマイチわかりにくい・・・そこで、長野付近だけ大雪の目安の氷点下36度のラインを赤の点線で目印してあります。

 18日まで、ゆっくりと南下していますよね・・・まだ底を打っていません

 まず、大雪情報にあった①氷点下30℃の寒気が入っているという意味は・・・・なにが降っても落ちてくるものは雪になる温度の寒気が上空に入っているということです。

 上空に寒気が入ってくれば、地上付近に暖かい南風が吹きこんでいない限り、地上の気温は低くなって、落ちてきた雪が融けずに地上に到達することになります。
 また、西高東低の冬型の気圧配置で発生する雪雲は、冷たい空気が暖かい日本海の海水が触れて発生する水蒸気のカタマリですが、より低い空気が流れ込めば、雪雲もより活発に発生することになります。
 ですから、天気予報では、雪になることを示すために、儀式のように上空の寒気の様子を天気図に重ねて見せたがるわけです。

 そして、特に大雪になりやすいのが②氷点下36度以下の寒気
雪雲がじゃんじゃん発達しますし、落ちてくるものは乾燥したサラサラの雪になる可能性が高くなります。

 明日午後6時までアニメにしましたが、明後日19日にかけてもまだまだ南下する傾向。
 大雪のモトになる雪雲が次々と生まれ続けますから、明後日からの週末の天気・・・明日もう一度チェックが必要ですね。


 ただ・・・・寒気が南下したとしても、それだけでは大雪になりません
長野県は、高い山に囲まれていますから、日本海で発達した雪雲をドンと山越えさせるポンプポンプを置く正しい?位置が必要になります。

 それが、日本海のシアーライン

大雪に関する情報(12月17日)


 これ、午後5時30分の衛星雲画像
シアーラインが発生するメカニズムは、図に書き込んでおきましたが、今日夕方の段階では山形県と新潟県の県境あたりに発達した雪雲を送り込んでいます。
 このシアーライン、今朝は能登半島付近にあって、長野県に雪を降らせていました(今朝の記事)。

 シアーラインは、衛星を見なくても、天気図上の弱い気圧の谷としてチェックすることができます。
衛星画像とほぼ同じ時間帯・・・午後3時の実況天気図

大雪に関する情報(12月17日)


 高気圧側に等圧線が折れ曲がっている部分が弱い気圧の谷
今日日中、シアーラインの南端には渦まで発生して、渦は低気圧にまで成長していました。
 山形県が大雪になるはずです。

 では、雪雲のポンプ・・・シアーラインはこれからどこへ進むんでしょうか?

大雪に関する情報(12月17日)


 明日朝9時の予想天気図
今朝と同じように、能登半島付近まで再び南下しています。
さらに、上で見たように強い寒気が南下していますから、今朝より雪雲はたっぷりと発生するはずです。
 大雪に関する情報が発表されてもおかしくないですね。

 もっとイメージが沸くように、シアーラインと降水(雪)の様子もアニメにしてみました。

大雪に関する情報(12月17日)


 シアラインが上陸する地点と、県内の雪のエリアを書き込んでおきました。
寒気の南下と同じタイミングで、シアーラインが長野県の西・・・能登・金沢方面から雪雲を送り込みます。
 ですから、大雪情報も県の西側のエリアを中心に大雪を予想しているわけです。

 さらに、西側を中心とした県内部の具体的なエリアは・・・明日のミニチュア版が発生した今朝の雪について検討した今朝の記事に書いてあります。
 それに、大雪情報の降雪予想エリアを読めばそれなりにわかりますよね。

 これで、①氷点下30℃と36℃の寒気の意味と、南下の様子、そして、②雪が降るエリア・・とその理由がわかりました。

 じゃ・・なんで③断続的に雪になるの?
かなりオタッキーな内容になってきましたけど、これ、お天気キャスターは誰も説明してくれません
メンドウですし、知りたがらない人も多いから・・・・。
 でも、ネットは読み飛ばせるから・・ということであえて書いてみます

 地上付近の空気の活動は、上空の空気の流れと密接にかかわっています。
上空の川(風)急カーブの下には地上の低気圧があります。

 そして、上空の川(風)のカーブが急なほど・・渦が強く巻いているほど・・・地上の気圧の谷や低気圧は活発になります。

大雪に関する情報(12月17日)


 これ、上空の天気図。
点線が上空の気圧の谷・・・いわば上空の川(風)の急カーブ
そして、赤丸で囲ったところが、上空の川(風)の小さな渦の場所
 小さな渦は、不規則にならんでいて、川の流れ(上空の西風)に流されて、日本の上空にやってきます。

 そのたびに、地上の弱い気圧の谷や低気圧が刺激を受けて、位置を変えたり、活動を活発にしたりするわけです。

 ですから・・・・雪雲も上空の渦がやってくるタイミングで強まったり弱まったりするんですね。

 かなり端折ったけど・・・まあこんな感じです。

 これで、大雪情報の疑問点①~③をまとめ終わりました・・・強引だけど。
少しは、情報の理解が深まれば嬉しいです。

 なんだかんだと書いてきましたが、これから明日、明後日にかけて、どんどん雪が降りやすい状態になってくる!
これだけで本当は良かったりして?


(あとがき モドキ)
 ところで・・・ブログでこれだけ書くのは、かなりモノ好きだと思われそうですけど、これも一種のリハビリ

 このところ、天気予報番組の制作とはちょっと違う方面のことに専念していたので、長野に帰ったのをきっかけに天気予報番組を作っていたころのカンを取り戻しているっていう感じです。

 ただ、毎日こうして書いていると、ネットの天気予報情報が多いだけで、状況に応じた効率的かつ正しい使い方の説明をしてくれていないことを実感します。

 せっかくネットを使うなら、面白い読み物として、流れでわかる天気予報を提供すればよいのですけど。

 という私も、ネットの天気予報が始まったころ、その企画に加わっていたこともあるのですが、その頃は、見やすい情報を沢山盛リこめば良いと思っていました
 今では、ウェザーニューズのHPで、視聴者参加型のネット放送のようなこともしていますけど、地域に根差した天気情報には至っていないんですよね。

 今日も記事を書きながら、ネット天気予報の今後のあり方・・・なんかを色々考えちゃいました。
 



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Posted by kasayan at 21:08│Comments(2)雑記
この記事へのコメント
毎日のこの素晴らしい記事はリハビリなんですか?旦那に「これはニュースステーションの予報担当のかたのサイトよ」といって見せたら尊敬、感動しておりました。

予報と体感の誤差についてですが、長野県は広いので地区ごとに感覚がすごく違いますね、きっと。南信育ちの私は12月に「大雪」と報道されても「北信だけだろうな。」と決めてかかります。上伊那の西側は中央アルプスがどっしりと壁になってますので日本海の悪天候はさほど影響がないと考えてしまいます。
代わりに春の牡丹雪=かみ雪=重たい大雪は上伊那ではよく言います。
初めての雪を見ると積雪にならなくても「雪が降った」といいますし、2度目以降は積雪がなければ「雪が降った」とは言わないし、雪の予報が当たったという感覚は、もともとあまり積雪量が多くない上伊那では12月はかなり予報とずれることが多いのではと思います。
Posted by hanakotaro at 2009年12月18日 00:21
hanakotaroさん、おはようございます。
ビジュアルだけでごまかしている内容ですから、これから沢山勉強されるとたいしたこと無いってすぐわかりますよ。
ステーション担当は、久米さんや乾貴美子(もう知らない人が多いですよね)が出演していたころなので、もうすっかり昔のことです。

長野県南部は北部の者にとってはなかなかイメージできないんです。
むしろ新潟県上越のほうが身近なんです。
気象台も長野にあるので、予報官もイメージしにくいのかもしれませんね。
どうしても北信のイメージを、太平洋側の気候と山岳で修正する思考過程になってしまうので、色々教えていただきたいところです。
伊那の方々の雪に対する感覚ちょっとわかったような気がします。
ありがとうございました。
Posted by kasayankasayan at 2009年12月18日 08:00
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