台風9号予想進路と気象状況、そして猛暑解消?(9月8日)
故郷長野の帰ってきた気象予報士Kasayan。久々の長野の天気に慣れるため、毎朝コツコツ天気予報の修行中。おきまりのテレビの天気予報とはちょっと異なる視聴者の視点から、今日の天気予報をチェックしています
1、今日の一言
台風9号の影響が気になるところではありますが・・・・・
もう一つ、
台風の後は涼しくなるの?という期待もあると思います。
今日は、まず
台風をチェックしたあと、猛暑回復のきざし?をチェックします。
2、台風予想進路
台風の影響を考えるにあたって、予想進路のチェックは外せないので、まずは
気象庁発表の予想進路図から。
台風の予想進路という情報は”生モノ”で、
コマメにチェックが必要ということは耳にタコだと思いますが、
毎時間チェックなんかできませんし、更新されていなければ意味がありませんよね。
台風の予想進路図は、
”3時間毎に台風の実況と予報を、各時刻の正時約50分後に発表”され、上陸後は
”1時間ごとの実況と1時間後の推定値が発表”される場合がありますから、タイムリーに新しい情報をチェックしてください。
台風予想進路図:
http://www.jma.go.jp/jp/typh/100924.html
10時40分追記:09時の計算値で、予想進路が大幅に変更されていますから、上のURLで確認してください。新たな予想進路は、下に掲載してある専門天気図の台風位置や、降水のエリアのアニメとほぼ一致していますから、下の資料をそのまま参考にしていただくことができます。
ところで、掲載した
午前3時の計算コースは、北よりに少々無理をさせているんじゃないか?と感じられませんか?
でも、やや弱まった台風が陸上・・・それも
長野県付近の高い山々を通過していく場合には、一時的に台風もバラけてしまう傾向にあって、どこが
台風の中心?などと考えるのが無意味になることがあります。
中心にこだわらないで、
台風通過で何が起こる?”ということに目を向けたほうが生産的です。
17時追記:台風9号は15時に熱帯低気圧に変わった・・・風速が17.2m/s未満になりました。実は、今朝の段階から米軍は台風9号を熱帯低気圧と判断していたようです。今朝、気象庁の予想進路と米軍の予想進路を比較しようと思ったら、すでに米軍の進路予報は中止状態。すくなくとも若狭湾付近で風速が34ノット未満と判断していました。気象庁と米軍の見解の相違ということですが、あえて米軍のデータに触れなかったのは見逃しよりカラ振りがよい場面だと考えたからです。
以前、別のブログで、気象庁と米軍の予想を比較したことがありますが、一長一短。米軍の予想進路図には予報円がありませんから、米軍のほうがイイと言うかたも多いのですが、それは根拠のない信頼だと思います。そもそも、米軍の最終的な予想進路図も、今日の台風19号の動向を正確には予測していませんでした。あえていえば、通常の天気予報の作成に使われるGSM、MSMといったシミュレーションプログラムが一番正確に予測していたように思います。
台風1009経路図(サムネイルをクリック)
3、台風で何が起こるの?
【台風の概況】
台風で何が起こるのか?を考えるなら、
台風を流す上空の強い風(場の風)の様子や、
台風に吹き込む空気の性質(湿り気の様子)など、とりあえず台風を取り巻く状況を把握しておくと、理解しやすくなります。
まず、スーパーコンピューターの計算値をプリントできるようにした
上空と地上の専門天気図でチェック。
上の段が、台風を押し流す上空の風の様子(矢印)。
強い風の流れは北海道付近ですから、台風は太平洋高気圧の北の端っこあたりの
弱い北西風に流されて、比較的ゆっくりと南東方向へ進むようです。
この流れの風向次第で予想進路図も微妙に変化するんですね。
下の段は、テレビでも使われている
普通の天気図の原図。
台風が
若狭湾付近から東海方面へと進む予想になっていますが、短期予報解説資料というプロ用の資料を読むと、
気象庁ではこれを北よりに修正しているようです(修正が吉と出るかはコメントしません)が、
安全マージンをとる上では参考になります。
10時50分追記:気象庁が進路予想をGSM計算値より北よりに修正したのは凶と出たようです。上の図のように若狭湾~東海方面でOK。台風専用のシミレーションモデルが異常だったんでしょうかね。ところでアメダスの風向風速を使うと、反時計回りの風の様子から、およその台風の位置がわかります。お試しを!
では、台風の動向を原図でチェックしたところで、次は気になる雨に影響する
雨の原料の供給状況をチェック。
赤で塗った部分が、特に雨の原料の多いところ。
太平洋高気圧の縁を回って、
台風の東側から台風や前線に供給されています。
ということは
台風の東側と前線付近で雨が多くなるということになります。
一方、東西の線が混雑している所・・・
前線帯の北側には乾燥した涼しい空気が南下しています。
北海道はこれで秋らしくなるわけですが、その他の地域は、夏と秋の戦場といったところでしょう。
【雨の様子】
さて、具体的に
雨の様子を見てみましょう。
台風の東側の雨エリアと、北側に東西に延びる
前線の雨エリアが合体して、東日本を東へ移動。
前線の雨エリアの影響は、
関東甲信北部や東北南部中心・・・
台風の雨エリアは、台風に吹き込む雨の原料がぶつかる
高い山の南~南西の斜面中心・・・という傾向だと思います。
今朝発表の
「台風第9号に関する情報 第87号」(ニュースで使われる情報)では・・・・
9日6時までの24時間に予想される雨量は、いずれも多い所で、
関東甲信地方 150ミリ
北陸地方、東海地方 120ミリ
近畿地方、東北地方 100ミリ
【風の様子】
続いて、
風の様子。
まずは遮るものがない
海上の様子から。
午前3時の実況では、
最大風速は20メートル、最大瞬間風速は30メートルということですから、今日いっぱい海上はこのくらいは想定しておきたいところ。
地形に影響される
陸上は?
リンゴや桃が気になるところですが、
地形に影響される風は計算値を鵜呑みにするわけにはいきません。
まずは、
風向の”傾向”からチェック。
まず、(コースを修正前の)
低圧部が二つ計算されていますが、
台風がアルプスを越えようとして、二つに割れている状態と思われます。
このため、教科書どおりに反時計回りに風が吹き込むのではなくて、
長野県付近を中心に複雑な流れになっています。
一言でまとめられませんが、台風が若狭湾から東日本を縦断するようなら、このような傾向の風が吹くと想定されると考えて、あとは
アメダスの風向・風速などで逐次実況監視しかないでしょう。
また、このような傾向から、
北陸の沿岸を除いて、内陸は比較的風が強まらないと思われますが、南北に延びる
長野県の松本~大町の盆地、伊那盆地などではやや風が強くなる可能性があると思います。
4、今日の空模様
天気マークの予報に、
正午の予想される雨のエリア(MSMという計算値)を重ねてみました。
太陽マークの分布と傘マークの分布が綺麗に一致していますから、予報官の頭の中の空模様も、これに似たようなものだったんでしょうね。
そして、台風が通過する
東日本。
前線の雨エリアの北陸~関東甲信北部が傘マーク一発。
台風の雨エリアの長野県も傘マーク一発。
その他のエリアは、断続的な雨といったイメージです。
14時追記:こちらを修正し忘れていました。台風のコースが変更されたので、こちらもイメージがちょっと変わります。台風の南東側・・東海でまとまった雨・・傘一発になります。レーダーでイメージを修正してくださいね。なお、風は沿岸部以外では弱い。熱帯低気圧との発表も間近かもしれません。
気象レーダー:
http://www.jma.go.jp/jp/radnowc/
気温・・・さすがに強い日差しは遮られ、北よりの風が入ってくる
長野県の気温は低めですが、
関東方面では温かく湿った空気が流れ込んで30℃以上。
ジメジメした暑さになりそうです。
台風の状況は時々刻々と変化しますから、時間が許せば、追記かTwitterで対応してみたいと思います。
最近ブログが重いので、そんなときはTwitterをご覧ください。
5、猛暑いつまで?
このグラフ・・・横軸のゼロの線が平年値。
台風が通過しても、平年値を下回りません。
台風が暖かい空気を残していってしまいそう・・・・・
でも、
来週13日以降、グラフが平年値あたりまで下がっていて涼しさの気配・・・・
13日の予想を見ると、
南岸に秋雨前線。
前線の北側に秋の移動性高気圧が計算されています。
太平洋高気圧が南下する傾向が出てきているということですが、この計算値通りになれば・・・・
とりあえず猛暑から解放される可能性も。
先週金曜日に発表された
一か月予報でもこの兆候(
最新の一か月予報)がでていたので、一か月予報を裏付ける形になっていますが・・・・
本当にこうなるように「祈りたい」ところですね。
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(当ブログに引用の天気図等は、気象庁、WNIより使用許諾を得ています)
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