天気予報は当たるのか?(8月14日)盆休みの大雨
故郷長野の帰ってきた気象予報士Kasayan。久々の長野の天気に慣れるため、毎朝コツコツ天気予報の修行中。おきまりのテレビの天気予報とはちょっと異なる視聴者の視点から、今日の天気予報をチェックしています。今日の天気予報は当たるんでしょうか?
1、今日の一言
この天気図は、
1999年8月14日の朝の天気図。
この数時間後、熱帯低気圧(TDと表示)付近、神奈川県
丹沢の玄倉川が増水して、川の中州でキャンプをしていた人
13名死亡という水難事故が発生。
この日をもって、
天気予報番組から「弱い熱帯低気圧」という表現が消えました。
「弱い」という表現が熱帯低気圧を軽視してしまうのではないか、ということから、東京のキー局各社とNHKで申し合わせをして、
気象庁より先に「弱い」という表現を使わないことにしたわけですが・・・・・・
この日、休日だったKasayan・・・雨の中を急遽休日出勤。
この大事件に天気予報だけでなく、ワイドショーなどへの対応にも駆け回り、さらに「弱い」の表現を止めませんか?という相談を他局の天気予報担当者と打ち合わせ・・・・。
忙しさはどうでもよかったのですが、
天気予報なんか誰も見ていないんじゃないか・・・・あてにしている人なんかいないんじゃないか・・・・という気持ちになったイヤな出来事でした。
今年の盆休み・・・・
今日は北日本や北陸で大雨。
気象庁からは、
「大雨と雷及び突風に関する全般気象情報 第2号」が発表されています。
大雨情報:
http://www.jma.go.jp/jp/kishojoho/
2、全国の予報
テレビやネットでご存じの天気マークの天気予報。使い方次第で何倍にも役立てることができますよ。まずは全国の予報から。「木を見て森を見ない」などと言いますが、天気予報も頭上の天気だけを気にしていてもダメ。
天気の変化は他県からやってきます。
天気マークだけで、およそのエリア分けをするとこうなりました。
別のエリア分けもできそうですが、いずれにせよ
北日本や北陸を中心に大雨。
大雨情報に記載されている予想雨量は以下のようになっています。
15日6時までの24時間に予想される雨量は、いずれも多い所で、
東北地方、北陸地方 120ミリ
東海地方 100ミリ
3、長野県の予報
長野にズーム。見るのは天気マークの天気予報だけ?
「・・のち・・」って何時でしょう? 「所により・・」はマークだけじゃわかりません。
昨日に引き続き、基本は
曇りベース。
全県で、
「所により 雨 で雷を伴う」という文言が記載されていますが、「昼過ぎから」などという
時間指定はされていません。
つまり、夕立とはちがって、
一日を通して、雷雨が降りやすい不安定な状態ということ。
盆休みの行楽・・・川遊びや登山は・・・・ですね・・・・
4、一般的な天気図の評
どんな理由でその予報は作られたんでしょうか?理由がわからなければ占いと同じ?テレビの解説は「天気予報の確からしさ」を知るための道具です。
今日の
大雨の原因は二つ。
日本海を東北方面へと進む
低気圧と前線、そして前線に吹き込む
暖かく湿った空気です。
前線や低気圧に近い、東北や北陸で大雨になるのは当然ですね。
大雨情報には
東海の降水量も記載されていますが、こちらは、湿った暖かい空気の影響中心。
午後から突然降り出す強い雨・・・・
短時間の強い雨に注意というパターンです。
この状態、
明日まで続きそうですから・・・アレ・・・ですね。
5、今日の天気予報は当たるのか?
100%じゃない天気予報。もしハズレるとしたらどうなるんでしょうか?
予報のハズレで失敗しない方法を考えます。
どうして、今日の
前線、活発なんでしょう?
昨夜9時の上空1500m付近の天気図ですが、
空気の湿り気の程度で色分けしてあります。
北側は
青の乾燥した空気、南側は
赤の湿った空気。
その差がずいぶん大きくなっていて、
境目に前線。
この
差が大きいほど、前線は活発ですから・・・・・・・・
不安定の様子や降水量とも関係してくる
雨の原料の程度・・・相当温位という数字も見てみましょう。
345K(ケルビン)以上の数字は、雨の原料としてはたっぷりで十分に不安定になる一つの目安ですが、
日本全国345K以上の雨の原料で覆われています。
水たっぷりの風船状態ですから、針でちょっとつつくと・・・上昇気流などが発生すると強い雨が降る状態。
水たっぷりの風船を壁に投げつけたような場所・・・前線付近の北陸や東北でまとまった雨になります。
これらの空気の動きを作る
骨格になる流れ・・・
上空の天気図も見てみましょう。
上空には太平洋高気圧が顔を出していません。
東海上でなりを潜めているようです。
一方、北緯40度以北・・・東北北部より北側で等高度線(等圧線と同じ)が混雑していて、
朝鮮半島付近には、上空の気圧の谷(赤の点線)があります。
上空の気圧の谷と、地上の低気圧が一体になると、地上の低気圧が発達するのですが、今夜東北にやってくる前線上の低気圧の上空に気圧の谷はないので、幸い低気圧は発達しません。
でも・・・・
明日夜以降、朝鮮半島付近の上空の気圧の谷が北日本にやってきます。
北日本・・・しばらく雨が降りやすい状態が続きそうですし、今日以上に降る可能性もありますから、
警戒継続といったところです。
さて、再び地上付近に戻って、
今日の雨の様子をチェックしておきましょう。
前線と低気圧付近に強い降水が計算されていて、今夜にかけて東北日本海側や、北陸に迫ってくるのがわかります。
また、
太平洋高気圧の縁辺にスコールのような小さな降水が計算されていて、これがぶつかる
太平洋岸中心にそこそこまとまった降水が計算されています。
傾向・・・わかりますよね?
で・・・・
東日本付近。
湿った空気がぶつかりやすい場所・・・南西方向から湿った空気がやってきますから、
高い山の南西斜面中心の降水になっています。
前線が接近する
北陸は、夜にかけてかなりまとまった雨になりそうですね。
12時30分追記:実況は計算値より少々早めに推移しているようです。3時間早めて考えればイイ感じかな?
湿った空気がぶつかる
南西斜面・・・・もうちょっと詳しく見てみましょう。
午後6時の天気図・・・・矢印は湿った空気が流れ込む方向ですけど、
北アルプスの西側で上昇気流ができていて降水活発、
松本や大町方面は反対に雨雲が弱まる下降気流のエリア。
北信五岳や美ヶ原・霧ヶ峰付近で再び上昇して雨を降らせるという構造になっているようです。
あくまで傾向ですし、発生した雨雲は流されますから、常にこの傾向が続くというわけじゃありませんけど、
今日の北アルプス登山は最低の条件。
また、
地形に影響されやすい雨ですから、局地的な雨・・・川の増水にはくれぐれもご注意を。
今朝は
大雨情報が発表されていますから、天気予報のあたりはずれを云々するのは止めにしておきます。
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(当ブログに引用の天気図等は、気象庁、WNIより使用許諾を得ています)
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