10時00分 17時50分 追記
台風上陸間際のニュース番組では、気象会社からの中継で昔の同僚の老けた顔を見ることができて・・・いつも懐かしい気持ちになります。
昨日は「絶対俺はテレビなんかにゃ出ない」と言っていたヤツが、したり顔で解説をしているのを見て思わず笑ってしまいました。
さて、西日本各地の防災担当者の方々は眠れぬ夜を過ごされたと思いますが、
日が昇っても上陸しない台風に「バカ野郎!!!どうなってるんだよ!」とイライラされていると思います。
最新のシミュレーションデータをご紹介する前に、まずは
ノロノロ台風と台風を押し流す偏西風の関係を、
新しい情報でチェックしておきましょう。
昨夜21時の地上実況天気図・・・お馴染みの天気図ですね。
台風が日本の東にある
太平洋高気圧にブロックされて東へ進めないということは一目瞭然。
そして、
北へノロノロという点について、
太平洋高気圧の西縁の弱い南風に流されているから・・・ということになります。
(南の新しい熱帯低気圧・・・計算もイマイチ・・・なんで、今日は見なかったことにしちゃいます)
次は同時刻の
上空5900m付近の天気図。
大陸には等圧線(正確には等高度線といいますが同じに考えてOK)が凹になった部分・・・上空の気圧の谷があります。
上空の気圧の谷直下にあるのが
偏西風ですが、
台風からずいぶん離れています。
これに乗ったら急速に北東進するのですが、この距離を見る限りそうならないことは容易に想像できるでしょう。
もう一点、
大陸沿岸まで-9℃の寒気が南下していて(青のライン)、ここから北側が秋の空気。
台風が偏西風の南側の弱い南西風に乗って
北東進するに従って、この寒気が台風に巻き込まれて、(暖湿気で発達する)台風が(暖気と寒気が混ざり合う力で発達する)
温帯低気圧化することが予想されます。
ゆっくりと北東進して、温帯低気圧化するという説明ができます。
(温帯低気圧化といっても、
性質が変化するだけで風や雨が弱まるわけではありません)
雲の様子も含めてイメージすると・・・・
以上を踏まえて、
立体的に偏西風と台風の位置関係を確認しておくことにします。
今日(3日)12時の予想ですが、あだまだ
偏西風までの距離は大・・・ノロノロは続きそうですね。
現在の台風の様子・・・これが
未来の空模様を考えるときの基本になりますからとても大切なんですけど・・・・十分すぎるほどご理解いただけたのではないかと・・・・・
米軍台風進路予想(TC Warning Graphicをクリック。日本時間は+9時間)
http://www.usno.navy.mil/JTWC/
気象庁5日間予報
http://www.jma.go.jp/jp/typh/typh5.html
台風情報(文字情報:台風に関するニュースの元ネタ)
http://www.jma.go.jp/jp/typh/typh_text.html
(詳しい実況把握の方法については、昨日の記事をご覧ください)
さて、
最新(初期値03時)のMSMという気象庁のシミュレーションで、
風の様子(矢印)と雨の変化をチェックします。
特に雨が強そうな場所など、図から読みとれそうなことを簡単に書き込みしておきました。
今夜、
台風が日本海に抜けても、台風に流れ込む暖湿気は南岸から吹き込み続けますから、
暖湿気が強風に流されてぶつかる山の斜面などを中心に、まだまだ雨が続きます。
強雨のエリアが非常にゆっくりと東進するので、並雨が降っていたところで急に雨が強まって、
積算の降水量が増加して洪水や土砂・・・・・ここはテレビの天気予報で耳にタコですね。
このブログでは、
湿った暖かい空気(大雨の原料)の流れ込みが、どのように変化するのか?ということをご紹介しておきます。
上でご紹介したものとは少々異なる
GSMというシミュレーションで、暖湿気(相当温位)の様子をアニメにしました。
暖湿気とは正反対の
冷涼乾燥空気も併せて表示させておきましたが、これが暖湿流とぶつかることによって起こる
北海道付近の前線の活発化の原因を紹介したかったから。
平面のアニメ(MSM)で見るとこんな感じ。
数字を赤く塗った部分が上で見た黄色のエリアに相当します。
そして、
水色の濃い部分が湿り気の多いエリア(混合比)で、
風の強いところに矢印を引いておきました。
流れ込む暖湿気が特に強風によって山にたたきつけられる部分で雨が活発化するようですね(雨のシミュレーションと対比させてみてください)。
また、
明日になると南岸に南北の強い強雨帯が形成されますが、太平洋高気圧の乾燥した下降流が南岸に割り込んでくるので、性質の異なる空気が激しくぶつかる場所・・・
前線帯が形成されるようです。
さて、次は気になる
風の様子・・・Kasayanの住む長野県では梨や桃、ずいぶん膨らんだリンゴの実がどうなるのか?という点がとても気になるところです。
地上付近の風速ですが、このアニメを見て、思いのほか風が弱いじゃん・・・と思われるかもしれませんが、
今朝7時のアメダスをチェックしてみると・・・・
計算値と
ほぼ一致しているようですね。
もっとも、これは
平均風速ですから、
瞬間風速では1.5~2倍の風速は想定しなくてはなりません。
そのあたりを考えて、上でご紹介した
風向のシミュレーションと併せて検討してみてください。
ちなみに、
Kasayanが住んでいる長野県付近では・・・・・台風の雨が活発化する明日朝・・・・
下の図は地上付近から上空1500m付近(高原や山など)・・・・南風で沿岸中心に20m/s以上。
地上付近の風速が弱めでも、少しだけ上空では強い風が予想されています。
悪夢のようなリンゴ台風をイメージする必要はないかもしれませんが・・・ちなみに
長野地方気象台が発表している明日の風の予報(3日05時発表)は
長野県中北部で「南の風 やや強く」・・・つまり
「10m/s以上15m/s未満 風に向かって歩きにくくなる。傘がさせない。」ということになります。
各地の府県天気予報:
http://www.imocwx.com/yohoud.htm
今朝はこのくらいにしておきましょう・・・・今日は家にいるので・・・・
何か気付いたことがあれば、追記あるいはTwitterでつぶやきたいと思います。
10時00分追記
「詳しすぎてわからない」・・という”つぶやき””があったので・・・・追記!
このブログ・・・
テレビやネットの天気予報を見て、「暖かく湿った空気が流れ込むので・・」という解説に「じゃあこれから暖かく湿った空気はどうなるのよ?」とか、「台風を押し流す上空の風が近くを流れていないんですね」という解説を聞いて「上空の風ってどこにあるのよ?これから流れに乗らないのかよ?」なんて
疑問を持ったときに役立つように作ったつもりです。
それに「○○地方で400ミリ」なんて放送されていますけど、○○地方全域でベッタリ降り続けているわけじゃありません・・・もっと詳しく知ってみたいと思いませんか?
わかるところだけ・・・疑問を解決するために・・・・読んでいただければ効果があるかと思います。
わからないところがあってもイイんです・・・飛ばし読みすれば・・・・。全部完璧にわかってしまうようなら、気象予報士なんて必要なくなっちゃいますから。
17時50分追記
台風12号・・・
今朝掲載したシミュレーション(MSM)より約6時間遅れで推移しているようです。
雨や風の計算値はそのままで良いとして、
位置を修正してイメージを再構築してください。
さて・・・
雨が長く降り続いて・・・洪水・土砂災害がニュースなどで注意喚起されていますが、同じ場所で雨が降り続くというコトがあまりイメージしにくかったりしませんか?
このところズバリのシミュレーション計算値ばかり掲載していて、基本的な天気図をチェックしてないんじゃない?と思われてもアレなんで、
12時間降水量がイメージしやすいプリント用の天気図に書き込みをしてみました。
青く塗ったところ・・・
点線の内側ほど連続した雨のイメージになる場所。
(0ミリの一本内側を塗るのがコツです・・・気象予報士受験予定の方・・・)
+161などと
数字がスタンプされている場所が
12時間降水量の極値にあたる場所。
明日朝までは岡山県付近、
明日夜にかけては岡山県と静岡県付近にスタンプされています。
気象レーダーでチェックしたり、
アメダスの降水量をチェックする際の参考にしてみてください。
ところで・・・・台風12号じゃなくて・・・
台風13号、明日朝までに発生することが予想されています。
その後の進路は・・・上空の気圧の谷が深まって偏西風も南下・・・・
関東に接近する前に北東方向へ・・・という計算がされていますが、
台風12号チェックの際に横目で確認しておきたいところです。
ご意見・ご質問等は、コメント欄・メール(kasayangw@yahoo.co.jp)
にてどうぞ。
可能な限り返信いたします。
(当ブログに引用の天気図等は、気象庁、WNIより使用許諾を得ています)
(当ブログはリンクフリーです)