2011年09月01日

台風12号の動向と雨・風の変化(9月1日)


 天気予報にとどまらず、ニュースでも台風がトップ項目に挙げられるようになってきましたから、具体的な予想降水量とかいつ頃から暴風になるのか?という話は頻繁に目にするようになると思います。

 わざわざブログで同じことをまとめも意味がないので、天気予報やニュースを見た後で読んでいただくとプラスアルファになるようなことに絞って書いていきたいと思います。


 とはいっても、このブログをご覧になる方が一番気にしていることはノロノロ台風の予想進路だと思います。




 上空9600m付近・・・かなり高いところの天気図ですが、台風の北側に高気圧があって北上をブロックしていることがわかります。
 ボチボチこの状態が解消して北上を開始することになりそうですが・・・・




 テレビではこればっかりの・・・気象庁1日午前3時発表の進路予想図ですが、何度もご紹介してきた各国のシミュレーションモデルもほぼ同様のコースに収斂してきました。
 速度に関しては数時間のバラツキがありますが、スーパーコンピューターのはじき出す結果はほぼこれで代表して考えることができそうです。

 米軍台風進路予想(TC Warning Graphicをクリック。日本時間は+9時間)
   http://www.usno.navy.mil/JTWC/
 気象庁5日間予報
   http://www.jma.go.jp/jp/typh/typh5.html

 また、多少計算値がズレるようなことがあっても、台風が大型である以上、受ける影響に大差はありませんから、上陸地点がどこか?ということにこだわるのはあまり生産的ではありません(高潮を除く)。

 ということで、ここからは何が起こるのか?という点について、天気予報では詳しく伝えてくれない点を中心に考えていきたいと思います。




 いきなりですが、今朝6時の関東の雨の様子を立体的に加工したもの。
 関東平野西部山岳地帯に偏って強い雨が降っていますが、これは台風から流れ込む湿った暖かいムシムシ空気(雨の原料)が南東風に乗って山の斜面にぶつかっているから

 なんで、こんな図をご紹介したかといえば、山の風上斜面で特にまとまった雨が降る・・・という傾向が、台風一過まで続きそう・・・ということをお伝えしたかったからです。

 これを平面で見るとこんな感じ・・・・




 ご覧いただければわかると思いますが・・・・台風が南にあるとつい忘れがちなのが北海道方面ですけど、北海道の西には寒気が流れ込んできていますから、湿った暖かい空気と寒気がぶつかって前線ができて・・・雨が活発になっています。

 暖かく湿った空気(暖湿流)だけを見てみると・・・・




 台風からの暖湿流が関東から西日本へと拡大傾向・・・・西日本の山の南東斜面には要注意ということですね。

 もちろん、台風本体が接近してくると並雨も降るようになりますから、南東斜面の雨は通常の雨に加算されるように降るということ。
 ノロノロ台風ですから長時間の並雨もありますから、全体の降水量が増えて・・・ありきたりですけど土砂災害や洪水に警戒ということになります。

 具体的にどんな雨が降るのか?ということですが・・・・まずは今日の雨の様子から。




 いつもと違って、暖湿流の様子が顕著に現れる上空1500m付近の風の流れを表示させています。
 暖湿流が強まって、風がぶつかる南東斜面の雨が強まる・・・ということを読みとっていただければOKです。

 次は台風が上陸しそうな3日の朝から夜にかけての様子を気象庁GSMモデルでチェック。







 進路予想図の暴風域も対応させてチェックしていただくのがよいと思います。
 丸一日かけても、近畿地方を抜けるだけですから、影響がどれだけ続くのか・・・想像できると思います。

 また、台風上陸が紀伊半島だとか、四国だといっても影響が大きく変わるものではない・・・ということもわかりますよね?
 (風向きは大きく変わりますから、港湾関係の方など高潮に警戒される方は風下にあたるのか?アメダス等で風向変化をコマメにチェックすることをおすすめします)

13時30分追記
 紀伊半島で雨活発化。暖湿流の様子はウィンドプロファイラ1km参照。沿岸部台風中心への風。














17時20分追記
 進路予想をご覧になっている方・・最新の情報が発表されるにしたがって上陸地点が微妙に西に変化していることに気付いておられると思います。




 MSMというGSMより解像度の高いシミュレーションの遠投距離?が台風の接近時間まで届きました。

 進路予想図や先にご紹介したGSMより西にズレていますが、この程度のブレは台風を押し流す上空の強い流れがない場合にはありうることです。
 また、陸地に接近するタイミングで東寄りに進む場合もありますから、完全に予報円だけの安全マージンを考えるべきとは言いませんが、最低でも潮岬~高知市の間程度の安全マージンは採っておく必要があると思います。
(上陸寸前で東寄りに進み、当初の上陸地点近くまで戻る場合があるのは、北東に向かう上空の強い流れに接近するので計算値以上にその影響を受けたり、陸地(山岳)の影響があるからです。)

 コースがズレた際、これまでの計算をご覧いただいたように、雨の降り方や風速については大きく変化はありませんが、風向に大きな変化が生じる場所があるはずです。
 その場所が風下にあたる海岸であれば、満潮時を中心に高潮の恐れが生じます。

 ピンポイントで上陸地点を予測したいという気持ちになりがちですが、(二位じゃダメなんですか?という)スーパーコンピュータの限度と、人間によるアナログな修正の限界を越えたところの話ですから、あくまで実況重視(アメダスとレーダーを駆使)、安全マージンを考えた判断と対策・・・これが必要だと思います。
 実況重視の方法については明日の記事で・・・・


 最後は、専門天気図・・・・Kasayanがいつも寝ぼけ眼でシコシコとチェックしている図に、多少解説めいたことを書きこんで掲載しておきますので興味のある方だけどうぞ・・・・。
 台風がノロノロの原因、暖湿流の方向が変化していく様子、などをわかる範囲で参考にしていただければ掲載した意味があるかな?・・・と思います。








 ここまで読んでいただいて・・・・お気づきの方もいらっしゃると思いますが・・・・いつもKasayanは予報をしていないんですよね。
 誰でも手に入れられる資料から何が読みとれるのか?をまとめているだけ。
 でも、資料の解説を読んでいただいて、予報を読んでいるような気持ちになっていただけたら・・・・それは読んだ方が無意識に頭の中で予報を組み立てているということです。
 実はそれがKasayanの意図しているところ。

 今日11時から、明後日3日の気象庁の通常の予報(短期予報)が発表されるようになります。
 このブログでイメージされた空模様を思い浮かべながら気象庁の予報を読んでいただくと、今までとは違う深読みができると思います・・・そして、友人に解説したら・・・あなたはお天気キャスターです。
 是非試してみてください。

 府県天気予報(予報文)http://www.imocwx.com/yohoud.htm

 今日、風や波についてあまりコメントできませんでしたが、時間があればTwitterでつぶやくか、追記をしたいと思います・・・時間があれば・・・・ですけれど。

 
 ご意見・ご質問等は、コメント欄・メール(kasayangw@yahoo.co.jp)にてどうぞ。
 可能な限り返信いたします。



(当ブログに引用の天気図等は、気象庁、WNIより使用許諾を得ています)

(当ブログはリンクフリーです)

  


Posted by kasayan at 08:02Comments(5)雑記